第165話 許されざる罪
「この光の玉が民の魂ならば、いずれは空へ還るのでしょうか?」
アポロンの問いに、ガイアは改めて三人に向き直る。
アシーナは泣き続けるアフロディーテに寄り添い肩を支える。
「ここは、私が作り出した魂を強制的に留める空間。言ってしまえば魂の鳥籠。いいえ、彼らにとっては牢獄と変わらないのかもしれない。これは私の独りよがり。私のわがまま・・・」
「お言葉ですがガイア様・・・ それは・・・」
「ええ。アッピーの言いたいことは分かるわ。クロッチにも同じ事を言われた。これが許されない行為である事は分かってる。例え不可抗力だったとしても人々の魂を弄んだ罪は重い。それは理解しているし、償うつもりよ」
「償うって・・・ どうやって・・・?」
ガイアは、目を真っ赤にしたアフロディーテに優しく微笑みかける。
「私の持つ全エーテルを、ニッキーに託すわ。この子達と一緒にね。遅かれ早かれそうしなければいけなかったし、これ以上この子達を束縛する事はできない。分かってはいたんだけど、なかなか踏ん切りがつかなくて・・・」
「アッフィーにばれちゃうくらいコントロールに支障をきたしてきているのも事実だしね。潮時なのよ」
ガイアは困ったように微笑む。
「そんな重要な場所を私やアポロンに教えてしまって良かったのですか? 私達は踏み入れない方が良かったんじゃ・・・」
ガイアは静かに首を振る。
「この場所を見せるためにあなた達に来てもらったようなものよ。 実はね・・・」
突然、地下空間の空気が振動し四人の肌を激しく叩く。
「な、なんだ?!」
前方に大きな黒いゲートが開かれ、中から黒いローブを纏った三人が飛び出した。
「ほら、いっぱいいるー! ビンゴみたいだよ♪ 私のおかげだね!」
まだ幼さの残るあどけない少女が隣の二人にウインクする。
「はぁ?! 何言ってんだよミンテ! ゲートを開いたのは俺だぞ!」
「そ、それを言うなら僕がこの場所を・・・」
逆立った黒髪の少年は、おどおどした茶髪の少年に肩を組む。
「じゃあ俺たち二人の手柄って事で♪」
「え~! アドニスもザグレウスも酷いよ! 繋いだゲートが歪まないように維持するの、大変だったんだからね?」
ガイアはアフロディーテたちを庇うように前に立つ。
「可愛らしい子たちね。元気がいいのはとても良い事よ。こんな所にどうしたの? 迷い込んじゃったのかしら?」
ガイアは笑顔で三人に尋ねる。
和気あいあいとしていた三人の視線が一斉にガイアへ集まる。
「違うよ?」
ミンテの瞳がひと際大きく開かれる。
瞳の中には薄緑色に輝く剣の紋様が刻まれている。
ミンテは光の玉を指差す。
「あなたの周りにうじゃうじゃ浮いているその光の玉。それを頂くの」
「おばさんにはそれ、もう必要ないだろ? 俺達が有効に使ってやるからさぁ。譲ってくれよ」
「あ、あの。ザグ。おばさんというより、おばあちゃんなんじゃ・・・」
ザグレウスは吹き出し大笑いする。
「ははっ!! 違いねぇ!! お前もたまには面白い事言うな!」
二人の瞳の模様が怪しく光る。
ガイアは小さく息を吐いた。
「あのね? 私、子供は大好きなのよ? アースを観光したいと言うのなら止めないわ。喜んで案内してあげる。エトナには面白い物がたくさんあるもの。料理も絶品よ。でもね」
ガイアの大地色の髪がゆっくりと逆立つ。
「この子達を奪うというのは聞き捨てならないわ」
ガイアの足元に魔法陣が展開される。
「出来れば子供に手をあげたくないの。おとなしくお姉さんの言う事を聞いてお家に帰ってくれると嬉しいかな」
真剣な面持ちのガイアを見て三人は一斉に笑い出した。
「あははっ!! おばさんが怒った♪」
「いいねぇ! どうせ力ずくで貰うつもりだったんだ! 話が早くて助かる!」
「ね、ねぇ。あのおばあちゃん本気で怒ってるよ? だからこっそりやろうって言ったのに・・・」
ガイアは静かに目を閉じる。
(やっぱり・・・ 千里眼が景色を見せない)
「スキあり!!」
ザグレウスが素早くガイアに襲い掛かる。
その瞬間、一本の青い導線が引かれた。
「何だ?!」
ザグレウスは咄嗟に飛び退く。
ガイアとザグレウスを隔てるように青い炎が燃え上がり障壁となる。
「あっちぃ!! 青い炎?!」
「子供であれ、敵である以上手加減はしない。覚悟する事だ」
「へっ! 子供だからって舐めていると痛い目に遭うぞ!」
ザグレウスはアドニスに目配せする。
アドニスが地面に両手をつけると、大地に根を張り地響きと共に三人の後ろに巨大なザクロの木が形成された。
「へへっ!! これで心置きなくやれるな!!」
ザグレウスは思い切り腕を回す。
「あははっ! この木があれば怖いものなしだよね! 私も頑張っちゃおうかな♪」
ミンテはあどけなく唇を舐める。
「子供を痛めつけるのは何だか気が引けるけど」
「そう? こういうやんちゃな餓鬼を躾けるの、ゾクゾクしない?」
アシーナとアフロディーテも身構える。
「みんな、命までは取らないであげて。お願い」
「はぁ?! そんな悠長な事・・・」
ガイアはただ優しく微笑む。
「お願い♪」
どこまでもお人好しなガイアにウンザリしながらも、内心ホッとするアフロディーテだった。
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