表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
164/294

第163話 膨れる疑念


ガイアと合流したアシーナ達は、夕食のためレストランを探し歩いていた。


前を歩くガイアは鼻歌を歌いながらスキップしている。


「今日は何にしましょうかね~? (オルニス)のステーキでもいいし、(ソロモス)の煮込みなんかも良いわね! あ、デザートは林檎(ミロ)のコンポートで決まりね♪」


「お婆さんがスキップするなんてみっともないですよ」


「もう! アッフィーったらいつもいつも! 余計な事ばかり言わないの!」


「何よ。本当の事を言っているだけでしょ?」


アフロディーテは美しい金髪をわざとらしくなびかせる。


「アッフィーはどうして私に意地悪するの? 私はこんなにあなたを愛しているというのに寂しいじゃない」


ガイアは急にしおらしく目を潤ませる。


「そんな捨てられた子犬みたいな目で訴えないでよ・・・」


「あら、いいじゃない♪ 二人にもっと私達の仲を見せつけてやりましょ♪」


「そういうのいいですからっ!!」


アフロディーテは腕に抱き着くガイアを振り回す。


「あはは! お二人は本当に仲が良いのですね。羨ましいです」


「アッシーのお母さんて確か・・・」


「はい。メティスです」


アシーナは寂し気に微笑んだ。


「アッシー」


ガイアは可愛らしいポーズでアシーナに手招きする。


不思議そうに首を傾げ目線を合わせるアシーナの頭を優しく撫でた。


「私があなたのお母様の代わりになれない事も、その傷を癒してあげることができないのも分かってる。それでも、私にとってあなたはもう私の可愛い大切な娘。助けが必要な時はいつでも言ってちょうだい。あなたが望むなら、私は喜んで手助けするから。王としても、個人としても」


「ガイア様・・・」


「遠慮なんてしたら、お母さん怒っちゃうからね?」


アシーナの表情が次第に安らぎに変わる。


「ありがとうございます。ガイア様」


ガイアは見守るアポロンに向かいビシッと指差す。


「アッピーにも言っているんだからね! 分かった?」


「は、はい。ありがとうございます」


不意を突かれたアポロンは咄嗟に姿勢を正した。


ガイアは歯を見せ無邪気な笑顔を向ける。


「さ、早くいかないとお店が閉まっちゃうわ!」


小走りで駆けていくガイアに思わず笑顔になる三人だった―――。




「はぁ~。お腹いっぱいね~。幸せ♪」


ガイアのお腹はポッコリと綺麗な弧を描いている。


「年甲斐もなく食べすぎなんですよ、全く。どこに収まるんだか・・・」


アフロディーテはご満悦のガイアに呆れかえっている。


「だって~。エトナの料理は美味しいんですもの」


「はい。とても親しみやすい味でした。私は好きですよ」


「同感だ。やはりエトナの味付けは興味深いものがある」


アシーナもアポロンも幸せそうな笑顔を浮かべている。


「大袈裟ね~。私たちが入ったお店がたまたま美味しかったってだけでしょ。他の料理屋は案外普通よ」


ため息をつくアフロディーテを尻目に、ガイアはアシーナとアポロンの手を握る。


「分かってくれるのはアッシーとアッピーだけよ・・・」


嘘泣きして見せるガイアに呆れたアフロディーテは額に手を当てる。


「はぁ・・・ だからそんな分かりやすい演技は・・・ あら?」


アフロディーテは町を歩く人々の頭から光の糸が伸びている事に気が付いた。


(この糸、さっきも・・・)


「ねぇ。ガイア様」


「な~に? アッフィー」


振り向くと、そこにはいつになく真剣な表情のアフロディーテが立っていた。


「どうしたの? そんな怖い顔して。あ、さてはお母さんが二人に構ってばかりだから嫉妬して・・・」


「この人たちの光の糸。これ、何?」


一瞬ガイアの体が固まる。


「きゅ、急に何を言い出すのよ。 突然どうしたの? もしかして食べ過ぎて眠くなっちゃった? 疲れが溜まっていたとか・・・」


アフロディーテの表情が険しくなる。


「いい加減、とぼけるのは止めてくれます? ここ最近のガイア様の様子は明らかに不自然です。気付いていないとでも思っているのですか? 一体、何を隠しているんです?」


「そ、そんな隠しているだなんて・・・ 私は別に・・・」


アフロディーテは歯を食いしばる。


「そういうの止めてよ!! どう見たって隠しているでしょ?! 馬鹿にしないで!! 分かってるのよ!! 何で?! どうして何も教えてくれないの?!」


自分でもよく分からなかった。


どうしてこんなに腹が立つのか。


どうしてこんなに悲しいのか。


どうしてこんなに不安なのか・・・


息は乱れ、行き場のない怒りをぶつけるように頭を掻きむしる。


「お、落ち着いてアッフィー!! お母さんが悪かったからっ!!」


拒絶するようにガイアの手を振り払う。


「違うって言っているでしょ?! 隠し事している癖に何がお母さんよ! いつまでも母親面しないで!!」


「腹が立つのよ! その余裕ぶった態度が! 見下した態度が! 何なのよ!!」


アフロディーテは手を振り上げる。


「きゃっ?!」


ガイアは身体を強張らせ頭を抱える。


「やめなさい!! どうしちゃったのよ! さっきから様子がおかしいわよ?!」


アシーナは今にも殴り掛かろうとするアフロディーテを何とか取り押さえた。


ガイアはしばらく目を見開いていた。


いつもと違う。初めて向けられる心からの、攻撃的とすらいえる本気の拒絶。


一筋の涙が頬を伝う。


「そんなこと・・・ 言わないで。私、本当にそんなつもりじゃ・・・」


アポロンは庇うように、声を震わせ顔を覆うガイアの前に立つ。


「言い過ぎだ。これ以上は見過ごせない」


アフロディーテはスイッチが切れたように我に返る。


目の前には、嗚咽し泣き崩れるガイアの姿があった。


「わ、私は・・・」


例えようのない喪失感に囚われたアフロディーテは、その虚ろな瞳でただ泣きじゃくるガイアを見下ろしていた。


ここまで読んでいただき、本当にありがとうございます!


また、評価・ブックマークもありがとうございます!


ご意見等ありましたら感想も頂ければ幸いです!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ