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第162話 運命の出会い


少女は目の前の光景に絶望した。


町の至る所から立ち昇る黒い煙と焼かれた家々。


激しく鳴り響く剣戟。


目の前で斬殺される兵士。


凌辱される女。


泣き叫ぶ子供の声。


全てが夢だと思った。


夢だと願った。


目に映る全ての風景が涙で歪む。


「ぱぱ・・・ まま・・・」


それでも、泣きわめく子供のようにはなれなかった。


由緒正しいアースの血統が、小さな体に刻み込まれたアースの誇りがそれを許してはくれなかった。


子供のように感情を吐き出せたならどれだけ楽だっただろう。


少女は溢れる涙を溢すことなく、乾いた唾と一緒に気持ちを飲み込んだ。


少女は荒廃し変わり果てた町をただ歩く。


焼け野原と化した町に不釣り合いな、綺麗なエーテルの玉がゆっくりと空へ昇って行く。


皮肉にも滅びた風景との差が幻想的な雰囲気をより強めていた。


帰るべき場所はもうない。


少女の身を案じ戦場へ向かった両親も結局戻ることはなかった。


少女はただ一つだけ願った。


『みんなと一緒にいたい』


呆然と歩き続けていると、兵を取りまとめ何やら話をする金髪の青年が目に入った。


兵士達に指示を出している。


どうやらここから撤退するらしい。


「ん? まだ生き残りがいたか」


金髪の青年はゆっくりと少女に向かい歩いていく。


「このような幼子が生き延びるとはな。一人では寂しかろう。この私が直々に仲間のところへ導いてやる」


青年が空に手を掲げると、激しい雷鳴が響き渡った。


少女は迸る雷を見上げぽつりと呟く。


「どうして・・・?」


「どうして、みんないなくなっちゃったの・・・? ぱぱ、どこ・・? まま、どこなの・・・?」


金髪の青年の口角が不気味に上がる。


「滅せよ」


青年が手を振り下ろし激しい雷撃が少女に降り注いだ。


少女を覆った無数の光の玉が雷撃を弾きかき消した。


「何だと?」


エーテルの玉が盾となり雷撃から少女を護った。


まるで意思を持つように。


少女に魅せられるように引き寄せられていく光の玉。


少女は無数の光の玉をその小さな体に取り込んでいく。


辺りのエーテルを全て取り込んだ後、やや大きめの二つの玉が少女を取り囲んだ。


「ちっ。目障りな。楽にしてやろうというのに抗うか」


青年は再び雷鳴を呼び起こす。


そしてより強い輝きを放つ雷撃を打ち下ろした。


大きな光の玉の片方が雷撃と激しく衝突し相殺させる。


「ちっ!!」


細かく散った光の玉は少女に取り込まれていった。


最後に残った光の玉は少女の目の前で静かに浮遊する。


そして光の玉はゆっくりと少女の胸の中へ消えていく。


少女の中で何かが弾けた。


「うあああああああああああ?!!」


少女は頭を抱え叫びだす。


その小さな身体に、エーテルの持つ膨大な情報量が激流のように流れ込む。


背中に刻まれる世界を模した円形の模様。


少女の足元に現れる巨大な魔法陣。


「平凡な小娘が覚醒しただと? 一体どうやって・・・」


「ぎゃああーーー?!!」


突如、青年の背後で叫び声が聞こえた。


振り返ると、巨大な漆黒の竜が兵士を噛み砕いていた。


その口から大量の血が滴り落ちる。


黒竜に気を取られていると、また別の方角から叫び声が聞こえた。


今度は三つ目の巨大な蛇の魔物が数名の兵士を締め上げていた。


やがて鈍い音と共に血を噴き出し兵士たちは絶命した。


巨大な蛇は鋭い眼光で兵士たちを睨む。


「うわあーーーー!!!」


兵士たちは一斉にその場から逃げ出す。


しかし、兵士たちはすぐにその足を止める。


「な、何だ・・・? これは・・・」


目の前には信じられない光景が広がっていた。


数え切れない数多の魔物が周囲を完全に包囲していた。


そして次々と兵士に襲い掛かり血祭りにあげていく。


「ああああああっ!!!」


逆立つ大地色のウェーブの髪が揺らめく。


少女の足元に浮かぶ魔法陣がひと際強い輝きを放つと、それに応えるように魔物達の行動は更に激化していった。


次々と生み出される魔物達。


「これ以上被害を出すわけにもいかん!! 撤退するぞゼウス!!」


「ちっ!!」


ポセイドンの号令に、ゼウスは不服そうに唾を吐き捨てる。


「この地は必ず我が物にする。・・・必ずだ」


ゼウスはアイテールを起動させ、生き残った者達と共に太い光の柱に消えていった―――。



辺りは静寂に包まれていた。


いつの間にか降り出した雨が焼け朽ち果てた建物の火を消し、黒煙が立ち上る無残な町だけが残されていた。


数多の魔物達は姿を消し、少女はただ一人降りしきる雨を見上げていた。


呆然と立ち尽くす少女の目の前に、一つの光の玉が姿を現す。


光の玉はゆらゆらと少女を離れては止まりを繰り返す。


こちらの様子を伺っているようだった。


少女は、おぼつかない足取りで光の玉に導かれるまま歩き出す。


廃墟の瓦礫をかき分け進んでいくと、どこからか小さく泣き声が聞こえてきた。


光の玉がその動き止めると、その下には瓦礫に挟まれ泣き叫ぶ金髪の少女の姿があった。


年は少し上だろうか。


自分より一回り大きい容姿に、勝手にそう結論付けた。


既に完成されたうつくしいその姿に、少女は思わず釘付けになった。


光の玉は役目を終えたように少女の中へ戻っていく。


少女は跪き、うつくしい金髪の少女の頭を撫でる。


戦火に巻き込まれたとは思えない程、綺麗で滑らかな髪だった。


泣き叫んでいた少女はピタリと泣くのをやめた。


その可愛らしい姿に、少女に笑顔がこぼれる。


「あなた、お名前は?」


「あふろでぃーて」


少女は、アフロディーテをそっと抱きしめる。


「とても素敵な名前ね。もう、泣かなくていいのよ。私がずっと傍に居るわ」


少女の腕の中で、アフロディーテは何とも言えない満たされた気持ちになった。


「あ、あの・・・」


戸惑った表情を見せるアフロディーテに、少女はすぐに察した。


「あ、私の名前を教えていなかったわね」


「ガイア。私の名前はガイア」


ガイアは慈愛に満ちた笑顔でアフロディーテを抱き寄せる。


「よろしくね。アフロディーテ」


いつの間にか雨は止み、その出会いを祝福するように晴れ間が差し二人を照らしていた。


ここまで読んでいただき、本当にありがとうございます!


また、評価・ブックマークもありがとうございます!


ご意見等あれば感想も頂ければ幸いです!

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