第159話 才色兼備な学院長
クロノス達は近況報告を兼ねてオリンポス神殿に訪れていた。
「ひゃ~。オリンポス神殿ってめちゃくちゃ大きいんだな~。こりゃ一歩出たら戻って来られる自信ないぞ」
アレクトは木々の中を歩きながら興味深く周囲を見渡している。
「空気が美味しい。とても美しい場所ですね。とてもゼウスが建設したとは思えません」
普段はあまり感情を表に出さないメガイラも、その輝かしい景観に魅せられていた。
「フッ。確かにな。俺達が住まうタルタロスとは正反対の作りだからな」
新王であるアシーナが不在の為、現在はアマルティアがオリンポス神殿を取り仕切り、オリンピア上級学院と学園はレトに一任している。
アマルティアの神術はかなりの集中力を要する、神経を使う術だ。
そのため術を発動する時は開けた場所で行う事が多く、本人曰く特に野外で行うとより精度が上がるようである。
オリンポス神殿の中庭は庭と呼ぶにはとてつもなく広く、町の自然公園の数倍はある。
木々を抜けると整備された芝が広がっており、その真ん中に一人の女性が白い魔法陣の上で浮いているのが目に入った。
「捜索ご苦労だな。アマルティア」
「クロノス様。いつもわざわざお越しいただく事、申し訳なく思います」
アマルティアは手にした純白の布で頬を拭う。
クロノスは首を振る。
「気にするな。我々も探しているとはいえ、ゼウス捜索にはどうしてもお前の神術が必要だ。これくらいはさせてくれ」
「そういえば紹介していなかったな。アレクトとメガイラだ」
「お初にお目にかかります。アマルティアと申します。以後、お見知りおきを」
二人はアマルティアの明達した所作に、思わず息を呑む。
「よ、よろしくお願いします!」
我に返った二人は慌てて頭を下げる。
「そんなに緊張なさらないでください。私達は協力し合う仲間なのですから」
アマルティアの絵画のような優しい微笑みに、アレクトとメガイラはただ惹きつけられていた。
「捜索にあたり何か変わった事はなかったか? 小さなことでも何でもいい。分かった事があれば教えてほしい」
「今のところ大きな進展はありませんね・・・ ただ、ゼウスのエーテルを追っている際に、異空間迷宮の微かな空間振動を検知しました。異空間迷宮は世界の掃きだめのような場所。気のせいかもしれませんし、異空間迷宮では元々起こる現象なのかもしれませんが・・・」
クロノスは思考を巡らせる。
「確かに。異空間迷宮はそもそも空間の歪みが日常的に起こる空間だ。それも相まって場所の特定は難しい。頻繁に出入りする俺たちでさえ正確なマッピングはできていない。だが、妙に引っかかる」
「異空間迷宮においてはあまり意味のない事かも知れませんが、同じ場所で起きた時の事を考えて念のため発生場所を記憶しておきましょう。これでも一度探った箇所は全て記憶しています」
「いつになるかは明確に申し上げる事は出来かねますが、見つけ出す事は決して不可能ではありません」
「あれだけ複雑な迷宮を・・・ す、すげえ。ただでさえこんな術使う奴なんて見た事ないのに」
「神術は展開維持することすら困難。恐らく相当のエーテルを消耗するはずです。それをこんな優雅に・・・ 憧れます」
アレクトとメガイラは呆然としている。
クロノスは思わず笑い声をあげた。
「恩に着る。そなたは真に優秀な女神よな」
アマルティアはゆっくりと首を振る。
「私には、これくらいしか貢献する事がありませんので」
「十分すぎるくらいだ。時にアマルティアよ。俺の眷属にならないか? お前ほど優秀な女神は傍に置いておきたい」
アマルティアは美しい所作で頭を垂れる。
「身に余る光栄ではございますが、丁重にお断りさせていただきましょう。特定の伴侶は作らないと決めておりますので」
「そうか。それは残念だ」
クロノスは再び笑い声をあげる。
「クロノス様ってよ、お気に入りの女はすぐに眷属にしたがるよな。命中率ゼロなのに・・・」
アレクトは小声でメガイラに耳打ちする。
「そういう事は無闇に言うものではありませんよ。はしたない。聞こえていたらどうするのです?」
「だってよ~。私が言うのもどうかと思うけど、何か勿体なくねーか? 顔は整っているし、寡黙だし、おまけに原初の神というブランド付きだ。実際かなりのハイスペックだと思うわけよ。それなのに、言い寄って来るのはペルさんくらいだもんなぁ」
「ペルさんが帰ってきたらしっかり伝えておきますね」
「じ、冗談だって! それだけは止めてくれ! 殺される!!」
メガイラに必死に頭を下げ懇願するアレクトを見て、クロノスとアマルティアは顔を見合わせ首を傾げていた。
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