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第152話 奔放な美女神


アシーナ達三人はエトナの広い路地を歩いていた。


所々、アース侵攻戦での爪痕が癒えていない箇所もあるが、以前と変わらぬ活気のある町に戻りつつあった。


「店の雰囲気はオリンポスに近いけど、何といってもこの遺跡が目を引くわよね。町全体は明るいのに、どこか儚げな・・・ そんな印象」


アシーナは辺りを見回し感心している。


「こんな廃墟に町を作るなんて、アース以外ではまずあり得ないわね」


アフロディーテは遺跡の壁をさする。


「言われてみれば、他で似たような町は見た事ないけど、どうしてなんだろう?」


「ふむ。その方が何かと都合が良かったのかもしれん。例えば家を作るにも、遺跡の素材をそのまま利用できれば運ぶ手間も省ける上に材料費も抑えられる。これだけ広大な土地を有するアースであれば尚更だ」


「アポロンの推測は当たっているかもね。これだけ広い町を一から素材を集めていたんじゃ、お金や労働力がいくらあっても足りないわ」


アシーナはアポロンに同意するが、アフロディーテはどこか納得のいかない顔をしている。


「うーん。二人の言う事も尤もなんだけど、どこか腑に落ちないのよね。だってこの遺跡の規模、エトナの大きさを考えたら材料を使い回すには小さすぎる。遺跡の素材を利用するにしても、明らかに材料は足りないはず・・・だとしたら、わざわざ遺跡と共存するような作りにする必要なんてないと思わない?」


「何か特別な意図を感じるわ。まるで、どうしてもこの場所に町を作る必要があったみたいに」


アフロディーテは独り言をつぶやくように思考を巡らせる。


「遺跡と何か関係があるのかな?」


アシーナは首を傾げる。


「さあね。作った本人に聞くのが一番早いわよ。でもあのロリババァ、肝心な事はいつも言わないから適当にはぐらかされちゃうかも知れないけど」


「そんな言い方したらガイア様が可哀想よ」


「あの人にはこれくらいでちょうどいいのよ。あら・・・?」


三人が広い路地を歩いていると、色々な種類のネックレスやブレスレットが並ぶ煌びやかな出店が目に入った。


どれも色艶よく光り輝き、その派手さに思わず惹かれてしまう。


「そこのお姉さんたち! ちょっと見て行かないかい? 安くするよ!」


「へぇ~! 可愛いアクセサリーね!」


アシーナはネックレスを手に取り、アクセサリーに負けないくらい目を輝かせる。


「あんたも安い女ね~。本物なわけないでしょ? 偽物にときめいちゃってまぁ・・・」


「べ、別にいいじゃない! 見るのはタダでしょ?」


アフロディーテは諦めるように肩をすくめる。


「そんな節約家みたいな王、世界中を探してもあんたくらいよ・・・」


「権力にもの言わせて散財する王よりはマシでしょ!」


頬を膨らめるアシーナの後ろに控えめに陳列されている、いくつもの糸を編み重ねた刺繍の入ったブレスレットが目に入った。


「これって・・・」


アフロディーテはブレスレットを手に取る。


「おお! お姉さん見る目があるね。実はその刺繍の入ったブレスレットは、ここにあるアクセサリーの中で一番高価なものなんだ。アースの技術が詰まった最高級の代物さ。何といってもガイア様が直接編まれた刺繍だからね。これほどの裁縫技術を持つ神なんてユピテリアにもタルタロスにもいないだろう。ガイア様はアースの誇りさ!」


「ふ~ん・・・」


アフロディーテは興奮気味にガイアの話をするお兄さんの頭から伸びる、糸のような光が漏れている事に気が付いた。


(糸・・・?)


光の糸はすぐに見えなくなり、アフロディーテは思わず目を擦る。


アフロディーテはしばらくブレスレットを眺めていたが放るように棚に戻した。


「ちょっとアフロディーテ! 商品をそんな雑に扱うなんて!」


「興醒めね。行きましょ」


それだけ言うと、アフロディーテはアシーナ達に背を向け歩き出した。


アシーナとアポロンは呆然とする店のお兄さんに深々とお辞儀し、急いでアフロディーテを追った。


「待ってよアフロディーテ!!」


「何よ。そんなに慌てて」


「あんな態度取ったらお兄さんが可哀想じゃない。気になる事があったなら伝えてあげないと伝わらないよ?」


アフロディーテはバツが悪そうに頭を掻いた。


「あ~。別にそういうんじゃないわ。顔だけで言ったら結構好みだったしね」


アポロンに意地悪に微笑みかける。


「ほう。ああいう顔が好みなのか。なるほど。アフロディーテも意外と・・・ ふむ。興味深い」


「何でそうなるのよ?! この超絶鈍感インテリ細目!!」


「何だ・・・ その呪文のような単語は・・・?」


アポロンは怒鳴り散らすアフロディーテを放置して一人考え込む。


そんなアポロンのマイペースな態度に、アフロディーテは一層苛立ちを募らせる。


「お、落ち着いて?! アポロンは前からこんな感じじゃない!」


アシーナは必死にフォローする。


「それより、お兄さんの態度じゃなかったら一体何が不満だったのよ?」


「あのブレスレット・・・ ()()()()()()()


「そうなの? だったらどうして・・・」


「あんな小さな出店にまでガイア様が関わっていると知ったら、何か急にイラッとしちゃったのよね」


アフロディーテの意外な言葉にアシーナは天を仰ぐ。


「それだけ・・・?」


「そうよ? 何か問題でも?」


アフロディーテの横暴さに肩を落とす。


「それより、そろそろ待ち合わせの場所へ向かいましょ。遅刻するとあのおばあちゃんうるさいから」


アフロディーテは鼻歌を歌いながら軽やかに歩く。


アシーナの肩に手が置かれる。


「諦めろ。アフロディーテはこういう奴だ」


アポロンも諦めたように首を振る。


「そうね。忘れていたわ・・・」


二人はため息をつきながらアフロディーテの後についていった。


ここまで読んでいただき、本当にありがとうございます!


また、評価・ブックマークもありがとうございます!


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