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うちの聖女様は怒らせたらマジでヤバイ  作者: うる浬 るに
聖女だからといって、万人が称賛するわけではないって話「シャンヒム王国編」
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18 どんな傷でもすべて癒せるといいのに

「きのこづくしってどうなんでしょうね」

「お嫌いでしたか?」

「そんなことはないんですけど……」


 今日も私はルル様に部屋から追い出された。

 何をそんなに悩んでいるんだろう。私では力になれないことなんだろうか。


『お昼は名物のきのこづくし料理を食べてくるといいわよ』


 そう言われて見送られたけど、どうせならルル様と一緒がよかったのに。


 今日の護衛はグラントとトリスタン。

 午前中は甘味を売っているお店回りをしていた。この二人、昨日のことをライルたちに聞いていたのか、グラントは私がお店に入っている間『この辺の地理を覚えるために見回ってきます』と町の探索に行ってしまって、残ったトリスタンは『甘い物好きなんで、お菓子のことなら何でも聞いてください』と焼き菓子屋や甘味処でおすすめ品の紹介をしてくれた。だから、昨日みたいに一人で買い物するより気が楽だったし、正直トリスタンとのお菓子談義は楽しかった。


 だけど、やっぱりふとルル様のことを考えてしまう。


「なんか元気がありませんね。大丈夫ですか?」


 グラントが心配してくれたけど、決して元気がないわけではない。


「えっと……」


 グラントはベテランだけあって、いつも落ち着いているし、周りに気を配っている。この旅で接した聖騎士のなかで、渋い雰囲気も相まってか、一番頼り甲斐があるように思えるから、思わず私は弱音がこぼれてしまった。


「見習いだとやっぱり頼りにはなりませんかね」

「そんなことはないと思います。ルル様のことを言っているなら、よくあることですから心配ありませんよ」

「よくあること?」

「聖女様たちは、こんな風に見習い聖女さんたちに休暇を与えて息抜きをさせることがあるんですよ。修行は大変でしょうから。今回はちょうど時間ができたので、ルル様もローザさんに楽しんでほしいと思ったんじゃないでしょうか」

「そうなんですか……だったら私が落ち込んでいたら、せっかくのルル様のご厚意を台無しにしちゃいますよね。それにグラントさんや、トリスタンさんにも、しなくていい気まで使わせちゃってるし」

「私たちのことは構いませんが、ローザさんが楽しまれれば、ルル様もお喜びになると思いますよ」


 グラントの話を聞いたら、なんだか吹っ切れた。私がルル様の役に立てる時がきたら、その時に全力で頑張ればいい。


 それからは、気持ちを改めて、二人と一緒に焼ききのこ、揚げきのこ、蒸しきのこ、きのこのスープなど、きのこ料理に舌鼓を打って堪能した。

 きのこも種類が多くて、いろいろな料理が運ばれてくるから飽きないし、とても満足できた。さすが名物なだけはある。


 その帰りは果物屋とあのドライフルーツを売っているお店に案内してもらって、ルル様と大司教様へのお土産を購入。

 今日はそんな感じで甘い物巡りをして一日が終了。




「明日は薬屋で話し合いですね。イヴさんたちはどうされると思いますか」

「みなさんが幸せに暮らせることが一番なのだけど、人それぞれ、考え方は違うのだから、わたくしにもわからないわ」

「そうですよね。それでも、もし私が聖教会が大嫌いでも、これからの人生と天秤にかけたら、できる範囲は譲歩すると思いますけど」

「そう結論をだしてくれたらいいわね」


 ルル様は寂しそうに微笑んだ。


 私も今回のことで、聖女なら誰もが称賛するわけではないことを身に染みて知った。理由はいろいろあるんだろうけど……。


 自分が聖女に直接癒されたことがなければそんなものだろう。ふと父親のことが頭をよぎる。


 聖女の癒しでみんなの心の傷も治せるといいのに。


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