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うちの聖女様は怒らせたらマジでヤバイ  作者: うる浬 るに
聖女だからといって、万人が称賛するわけではないって話「シャンヒム王国編」
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10 ルル様だからすごいんですけどね

 私たちが宿泊しているところは、主に中流の貴族が使用する宿屋なので、二人部屋でベッドが二台あってもそこそこの広さはある。

 ただ、寝室しかないため、窓辺に椅子が二脚だけの小さなテーブルセットが置いてあるだけだから、来客を迎え入れるには不向きだ。

 それでも他に場所がないので仕方がない。


 気を利かせてグラントが、自分の部屋から足りないぶんの椅子を一つ持ってきてくれた。本当はそのまま私たちの部屋でルル様の護衛をするつもりだったみたいだけど、危険性はないと判断したルル様が、部屋の外での待機をお願いしたので、心配してはいたけど、他のみんなと一緒に廊下で待つことになった。


「狭くてごめんなさいね。えっと……お名前を聞いてもよろしいかしら」

「モニカ」


 モニカと名乗ったこの女性は宿屋の前をうろうろしていたらしく、それをライルが発見して声を掛けたそうだ。

 ここまでやっては来たものの、平民からすれば敷居が高いであろうこの宿屋に入ってくる勇気がなかったようだから、ライルが見つけていなければ諦めて帰ってしまったかもしない。


 モニカはわざわざ自分からやって来たというのに、部屋に入る前からずっと渋い顔をしたままで、今も黙って部屋の中を観察していた。


 ルル様はそんな彼女から名前を聞く以外は何も言わず、自ら話し始めるのを待っているようだ。


「これ、よかったらどうぞ」


 宿にお願いしてお湯を用意してもらったので、私は紅茶を淹れた後、それと一緒にトリスタンからもらったドライフルーツを小皿に乗せてモニカの前に置いた。

 それでもモニカは膝の上に拳を置いたままでそれらに手を付けようとしない。


 様子を見ていると、たまに言葉を発しようと口を少し開けてはみるんだけど、すぐにぎゅっと閉じてしまう。それを繰り返しているから、用件はかなり話しづらいことなんだと思われる。間違いなく例の薬のことだろうけど。


 ずっと見つめていたら催促しているみたいだし、余計に気が重くなっても困る。私はあえてこの緊張感を無視して、自分の分のドライフルーツをひとつ摘まんで上品に口に入れた。

 爽やかな甘さが口中に広がる。これ帰りに買って帰ろうかな。

 そんなことを考えていると、


「あの……」


 やっとモニカが話す気になったようだ。ルル様と私は彼女に視線を向ける。


「なんでしょう?」


 ルル様が先を促す。


「本当に誰にも邪魔されず、あたしたちが暮らすことなんてできるの?」

「ええ、貴女たちに問題がないと確認できれば、薬屋は人々を癒せる職種ですし、聖教会が後ろ盾になることは可能ですよ。本当は、ここよりゼ・ムルブ聖国の国内の方が、より安全を保障できるのですが」

「聖教会とゼ・ムルブ……」


 モニカの顔色が曇る。


「申し遅れましたが、わたくし聖女の称号を賜っておりますルルと申します」

「見習い聖女のローザです」

「聖女!?」


 モニカは口に手を当てて驚いてはいるけど、顔が見えないので表情はわからない。

 それでも言動から、あまり良い印象をもってないのだけは伝わってきた。


「ですから、わたくしが保証いたしますわ」

「本当に聖女? 正真正銘?」

「ええ、お疑いでしたら……どこか痛むところか、調子が悪いところがあれば、すぐに証明できるのですけど」


 ルル様に癒してもらえば、一発で信じてもらえるはず。だけどモニカは、年配の方のように腰や膝が痛いとか、都合よくどこかを患っているなんてこともないだろう。

 仕方ない、モニカには悪いけど強くつねってみるか? それか針で指を刺してみるとか? でも、その程度じゃ信じてもらえないかもしれないけど。


 なかなかいい案が思いつかないでいると、彼女は自分の顔に手をやった。


「だったら……」


 そして目元を覆い隠している前髪をその手で上げて見せる。


「だったら、これも治せるの?」


 モニカの顔を見た私は息を飲んだ。なぜ彼女が前髪をここまで長くしていたのかが理解できたからだ。

 モニカの左目のまぶたの部分には一文字に大な傷跡があり、とても痛々しかった。

 失明はしていないようだけど、傷が引きつっていて目を大きく開けることができそうにない。


 そんなモニカに向かって、ルル様が椅子から立ち上がって声をかけた。


「傷にふれてもよろしいかしら」


 一瞬戸惑いを見せながらも、モニカは小さく頷いた。

 了承を得たルル様は彼女の前で移動して腰をかがめながら、そっとまぶたにふれる。


「いかがでしょう」


 いつも通りそれはあっと言う間の出来事だった。

 モニカ自身、何が起こったかすぐにはわからなかったようで、瞬きを何度かして、自分の顔をさわって確かめてから、ようやく驚愕の表情を見せる。


「嘘でしょ? 本当にこんなに簡単に治せるの? ひどいよ神様……」


 傷が治ったというのに、モニカの声に嬉しさはない。どちらかと言ったら逆に絶望に近い声色だった。


「無理に聞き出したくはありませんが、今まで貴女に何があったのかを、わたくしに教えていただけませんか。サリーさん」


「「えっ!?」」


 ルル様はモニカに向かってサリーと呼び掛けた? サリーって私たちが探している少女のはずだ。


 ルル様もサリーのことを知っていたの? まさか彼女がそのサリーなの?


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― 新着の感想 ―
[一言] 続きが楽しみです( ・`ω・´)
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