01 今回のお仕事は人探しです
「くしゅんっ」
朝早い時間は空気がひんやりしていて、ちょっと肌寒い。街で流行っているワンピース姿の私がくしゃみをしたので、ルル様がそっとストールを掛けてくれた。
「ありがとうございます。うすら寒いのは、たぶんこのスカートの丈がいけないんですよ」
私は自分がはいているスカートをつまんで訴える。
「そうかもしれないわね。でもローザには似合っているわよ」
「それを言うなら、ルル様も可愛らしいです」
私は、膝が見える長さのワンピースに、精巧な柄の入ったバックルがついているベルトという服装だった。
問題はそこから出ている足の部分。素足を覆うためには微妙に足りない長さのハイソックス。だから膝の上の何センチかは肌がむき出しになっている。
あと、長距離を歩けるように、頑丈な革のブーツを履いてるけど、これも、見栄えをよくするための装飾がついていた。靴は、履物として最低限の機能さえあれば、それで十分だと思っている私にしてみればかなり贅沢なものだ。
今回私は、そんな服装をしているけど、となりにいるルル様もそれに似たような恰好をしている。
「まさか大司教様がこんな服を用意するとは思ってもみませんでしたよ」
「あの方はローザのことをご自分の娘のように思っているみたいだから、街の皆さんと同じように、お洒落をさせてあげたかったのではないかしら」
「それは有り難いんですけど、こんなに短いスカートをはいたのは子どもの頃以来なので、すーすーして心許ないです」
「いつもの修道服は足元まであるものね。それについてはわたくしも同感だわ」
いつもしている清楚な装いとは程遠い。
流行りというくらいだから可愛らしさが前面に押し出されているのは仕方がないんだろう。
さて、なぜ私たち二人がこのような姿でいるのかというと、今回私たちに与えられた仕事はいつもと違って、聖女の癒しを施すのではなく、人探しだからだ。
訳あって、教会の人間であることがばれないように歩き回る必要があるため、ルル様と私は、一般人の女の子たちと同じような服装をしていた。
「今回は教会の馬車を使えないから、結構歩くことになると思うの」
「それは全然大丈夫ですよ。そのためのブーツですしね」
もし足が疲れたり、筋肉痛になったら、聖女の癒しの力を使って自身を治療すればいい。自分で実感することができるから修行にもなるだろう。
「私たちが探す人は、隣国のシャンヒム王国にいるんでしたよね」
「情報だとそのようだわ。その方が聖教会が探しているご本人であればいいのだけれど」
今から五年ほど前、聖女の力を持っているのではないかと、聖教会で名前が挙がっていた少女が行方不明になる事件があった。
その少女は、ある日忽然と姿を消してしまって、今まで何も手掛かりがつかめず、消息不明だ。ところが今頃になって、シャンヒム王国において、聖女の力を使用しているらしき少女が現れたとの情報が入った。
それを確認する任務がルル様に課せられたというわけだ。
はっきりした状況がつかめていないから、身辺調査をしてから保護するために、私たちは一般人としてその少女に接触することになっている。
万が一、少女に聖女の力があると知っていて、それを利用するために誘拐した者が背後にいた場合、少女に危険が及ぶとまずい。
最悪な状況であることを考えながら慎重に行動する必要があった。
当初ルル様と私は、姉妹として行動する予定だった。
だけど、見た目の関係で私が姉になるしかないのに、ルル様をどうしても呼び捨てにできない。それに妹相手に話すような言葉遣いができず、変な話し方になってしまうため、結局、お嬢様とその侍女という役割にするしかなかった。
なんでかな。
ルル様に敬語を使わない、そう思って気にしながらしゃべると、私の言葉に皆が眉をしかめる。
そろそろ頭の中の暴言を封印しなければまずいのか?
でもそうすると、とてもストレスがたまりそうだからちょっと……いや、かなり無理そうだ。




