02 護衛の聖騎士
私たちは教会のエントランスで今回の警護を担当する四人の聖騎士たちと合流した。
「お待たせして申し訳ございません」
騎士服ではなく、旅装束をしている聖騎士の一人がルル様に挨拶をした。その横で他の三人も一緒に頭を下げる。
「わたくしたちも今来たばかりですわよ。今日からよろしくお願いしますわ」
「こちらこそよろしくお願いします」
「お荷物はこちらですか。お持ちいたしますね」
「ルル様とローザさんの警護を任されるなんて光栄ですよ」
「お二人は我々が命に代えてもお守りします」
『命に代えて』その言葉にルル様は微笑みで応えたけど、本当は言ってほしくない言葉なんだと思う。
普通、そんなことを言われたら、頼もしいと思うんけど、ルル様の場合は違った。
以前『わたくしの使命は人々の命を救うことですもの。わたくしの方こそ貴方の命をお守りするために存在しているのですわ』と聖騎士に言ってしまって、恐縮させたことがあったから、否定することはなくなったけど、本心は今でも変わらないと思う。
聖騎士の一人は三十歳のグラント。
がっしりした体形で落ち着いた雰囲気。渋い中年の聖騎士で、ルル様とは面識があるそうだ。
私たちの荷物をさっと手に取ってくれたのが二十四歳のトリスタン、穏やかな物腰で一緒にいてほっとするお兄さんタイプ。
そのとなりに並んで、こちらに笑顔を振りまいているのが、二十三歳の聖騎士ライル。さわやかな感じのモテ男だ。女の子たちからその名前を聞くことがあったから私もなんとなくだけど知っている。
そしても最後の一人は、一際目を引く二十一歳の青年。
それは聖都の教会関係者で、知らない人はいないと言われているくらい有名な聖騎士セレンだ。もともと、大聖堂にある女神様の彫像に顔が似ているという理由で、有名になったんだけど、どうも本人は『美しい顔の騎士』という肩書きで目立つことが受け入れがたかったようだ。
だからか、見た目ではなく、剣術で名声を得ようと、とても努力をしたと聞いている。頑張ったかいがあって、現在、若手の聖騎士同士の練習試合なら負け知らずらしい。
噂だと、ライルは誰にでも優しくて、汗さえもさわやかな香りがするらしい。騎士服姿が素敵すぎて恋に堕ちる女の子が続出だそうだ。
セレンの方は物語の主人公みたいに凛とした格好良さの上に、名実ともに若手最強の聖騎士だから、自分一人だけの騎士になってほしいというお姫様願望を持つ女の子たちが多い。
だから、この二人はみんなのあこがれの的で、今回、ルル様について一緒に行動する私は、お付きでついでだとしても、イケメンの双璧に守られるなんて羨ましい、一緒について行きたい、代わってほしいと、そりゃあもう大変だった。
女の子たちは騒いでいるけど、顔がいいだけだったら、マルセルで見慣れている。だからか、私は特別素敵だとは思えないんだけど。
今までと違う聖騎士が護衛についたことには理由がある。
ウォークガン帝国で、失態を犯した聖騎士たちがルル様の護衛から外れたからだ。
ルル様は、教皇様に『ウォークガン帝国で問題は何もなかった』と報告したみたいだけど、聖騎士たち自身が見習い聖女を守れなかったことに対して自分たちの不始末だったと、ルル様専任護衛の辞任を願い出たから仕方がない。
彼らにはわりと仲良くしてもらっていたから、今後の旅は寂しくなりそうだ。それはルル様も同じだと思う。
そんなわけで、今は新しい専任の聖騎士を選考している最中。
とりあえず今回限定の要員として、急遽この四人がルル様の警護として選ばれた。
グラントたちの腕前はわからないけど、街で何かあった場合のために、現在若手の中でならナンバーワンだと言われている聖教会屈指のセレンをつけてくれたんだと思う。
だけど、こっそりとやらなきゃいけない任務なのに、この人たちといたら目立つんじゃないの?
私がそんなことを考えながらなんとなく視線を向けていたせいで、セレンと目があってしまった。
セレンが軽く頭を下げたので、私も同じように返しておく。
それに気がついたライルも爽やかに微笑みかけてくる。彼にもお願いしますとの気持ちを込めて同じように頷いておいた。




