↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
僕たちの物語  作者: 鎧
皇女編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

49/53

四節 外出

「お嬢、出かけたい!」


皇女がそう声を弾ませると、お嬢はふっと顔を上げた。

煎茶色の美しい長い髪が、肩から背中へと柔らかく流れている。

腰の少し上まで伸びた髪は左右が丁寧に編み込まれてまとめられ、

その隙間には可愛らしい小さな飾りが覗いていた。


白いフリルのヘッドドレス。

白と淡い色彩を基調とした、気品の漂うクラシカルなメイド服。

胸元には、存在感のある大きなリボンが結ばれている。


「どこへ行くの?」

「まだ決めてない!」

「また?」

「うん!」


皇女が胸を張って嬉しそうに笑う。

お嬢はくすりと微笑み、小さく息を吐いた。


「じゃあ、とりあえずお着替えからにしましょうか」

「はーい!」


皇女はとびきり素直な返事をした。

着替えの最中も、その頭の中は行きたい場所のイメージでいっぱいだった。


「あっちも行きたいし、こっちも見たいし……」

「ふふ、欲張りねぇ」

「だって、せっかくお出かけするんだもん!」


お嬢は呆れつつも愛おしそうに笑いながら、皇女の乱れた髪を優しく手際よく整えていく。

やがて、すっかり支度が整った。

パタパタと足音を響かせて玄関へ向かう。

そこには、すでに一人の男が待機していた。

艶のない黒い髪。 無造作に流れた長めの髪が、その鋭い目元を覆うようにかかっている。

冷徹な光を孕んだ赤い瞳が、こちらへやってきた皇女を静かに捉えた。

一見すると細身に見えるものの、その服の下には隙のない固くしなやかな骨格が潜んでいる。

ただそこに立っているだけで、常人ならば気圧されて退いてしまうほどの凄絶な圧を放っていた。

けれど、皇女にとっては見慣れた日常の光景に過ぎなかった。


「行こ!」


男は言葉を発することなく、短く顎を引いて頷いた。

皇女は弾むような足取りで重厚な扉へと向かう。


「行ってきます!」

「お気をつけて」


お嬢が温かな声を添えて見送る。


「うん!」


男が影のように、そのすぐ後ろへと従った。

皇女の頭の中は、もうすでに屋敷の外に広がる世界への期待でいっぱいだった。


今日はどんな出会いがあるだろう。

どんな素敵な光景が見つかるだろう。

何か心を躍らせる「萌え」や、面白いものが待っているかもしれない。

そう想いを巡らせるだけで、一歩踏み出す足取りはどこまでも軽やかだった―――。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。