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僕たちの物語  作者: 鎧
旭編

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29/41

二十九節 共鳴

その頃から、旭にはとあるSNSで知り合った人物がいた。

その子は、自分と同じ症状を抱えていると話していた。

他愛のない雑談、互いの相談事、記憶が欠落する時間の苦悩など、

旭にとってその存在は日増しに大きなものとなっていった。


その子と向き合っている時、旭はごく自然体でいられた。

時には、相手の内部にいる存在たちと会話を交わすこともあった。

そうした経験を、旭は自分の中に少しずつ蓄積させていった。

様々な意見に耳を傾け、解決の糸口を探る。

自己分析を静かに重ねていくうちに、

ある程度は自身の内部とも向き合えるようになっていった。

そして、自分の中にいる同居人たちが決して敵ではないのだと、理解するようになる。

旭にとって「一人ではない」という感覚は、

いつしか当たり前のものとなり、確かな心強さへと変わっていた。


専門学校を卒業し、養成所と劇団を行き来する多忙な日々の中でも、

その子とのやり取りは絶え間なく続いていった。

旭の生活において、その存在はなくてはならないものになっていた。


住んでいる地域が離れていたため、

やり取りはずっとネット上のメッセージや電話だけに限られていた。

二十歳を過ぎた頃だったろうか。

ごく自然な調子で、相手から切り出された言葉があった。


「ねぇ、一緒に暮らさない? 家が嫌なら、出ちゃえばいいのよ」


旭の胸に、強い衝撃が走った。

家を出るという選択肢など、それまで考えたこともなかったのだ。

結果として、旭は経験の一環という名目で母から生活を許可され、

所属する劇団の最寄り駅の近くで、二人で暮らすための家を探し始めた――。


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