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僕たちの物語  作者: 鎧
旭編

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23/42

二十三節 探索

家に帰ってから、旭は調べ始めた。

なぜこうなったのかが気になった。

純粋に、ただそれだけだった。


離人症(りじんしょう)とは、自分が自分の心や体から離れていったり、

また自分が自身の観察者になったりするような状態を感じること。

罹患者は自分が変化し、世界があいまいになり、現実感を喪失し、

その重さや実感を失ったと感じる。

慢性的な離人症は離人感・現実感消失障害 (DPD)とされ、

これはDSM-5では解離性障害に分類される。by Wikipedia


合っている……自分の感覚が、そのまま文字になっている。

そういえば、と旭は思い出す。

中学生の頃、なぜこう見えているのかをシノと話したことがあった。


「これって、慢性的……?」


旭はその先にある文字へ視線を移した。

これは解離性障害に分類される。

旭は震える指でマウスをクリックした。


解離性障害(かいりせいしょうがい)とは、

自分が自分であるという感覚が失われている状態が主となる個々の精神障害のためのカテゴリ(分類)である。by Wikipedia


そして、その下も読み進める。


解離性健忘では、一般的な出来事や社会常識などの記憶は保たれているにもかかわらず、自伝的な(個人的な)記憶が欠落する病。

離人症性障害は自分を外から見ているような離人感や現実感消失感があり、

それが持続的あるいは反復的に現わるために社会的・職業的に支障を来す病である。

解離性同一性障害では一人の人間の中に複数の人格(パーソナリティ)が存在するような状態が見出される病。

これらの症状は他の精神障害や身体疾患でも見られるため、鑑別は必要とされる。

解離性障害の人は、防衛機制の解離を無意識的に使用しているとされる。

by Wikipedia


「……解離性障害……」


旭には最近、思い当たることがあった。

例えば、後輩と休日に出かけたはずの日。

旭は夕方、家にいた。

けれど携帯の画面には


「また遊びましょうね」


とメッセージが届いていた。


そして、もう一つ。

買った覚えのない文房具と、そのレシートが部屋に残されていたこと。


旭の好みでは選ばないようなデザインだった。


「これって……」


画面を操作する指の震えが強くなる。

文末に置かれた文字に目が留まった。


解離性同一性障害――。


リンクはなかったが、なぜか強く心が引っかかった。


旭は検索窓に文字を打ち込む。


『解離性同一性障害』


そして、検索ボタンをクリックした――。



解離性同一性障害は、かつては多重人格障害と呼ばれていた精神疾患で、

複数の人格が同一人物の中にコントロールされた状態で交代して現れるものです。

それらの人格は、正常時のその人にみられるものとは異なる発言、気質、

および行動パターンを示すことがあります。

また、日々の出来事や重要な個人情報、

心的外傷(トラウマ)になる出来事(心的外傷的出来事)やストレスの強い出来事など、通常なら容易に思い出せるはずの情報を思い出すことができません。

自分の体が変わったように感じたり(例えば、小さな子どもや異性など)、

自分のものではないように思えたりすることがあります。

自身を一人称複数形(私たち)で呼んだり、

三人称(彼、彼女、彼ら)で呼んだりすることもありますが、

その理由が自分で分からないこともあります。

複数の人格の中には、他の人格が知らない重要な個人的情報を知っている人格が存在することがあります。

複雑な内的世界の中で、いくつかの人格が互いの存在を知っていて、

人格間でやり取りがあるようにみえる場合もあります。

例えば、人格Aは人格Bの存在を知っていて、まるでBを観察しているかのようにBの行動を把握しているといった場合があります。

人格Bは人格Aの存在を認識している場合もあれば、そうでない場合もあり、

同居する他の人格についても同様のことがいえます。

人格が入れ替わり、入れ替わる前の人格のとった行動を認識していない場合には、

しばしば生活に大きな混乱が生じます。

by MSDマニュアル


「……」


重なる部分が、あまりにも多かった。


胸が速い鐘を打つように脈打つ。

声を聞いたことはない。


けれど、それ以外の記述が自身の体験と次々に結びついていく。

画面を見つめたまま、旭は思った。



「もしかして――」

その刹那。



「詮索すんな」



頭の中で、声が響いた。

あきらかに自分のものではない、低く冷ややかな拒絶の響き。



旭はその一言で、理解した。


ああ……私の中には、別の誰かがいる。


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