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僕たちの物語  作者: 鎧
旭編

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19/40

十九節 証明

それからの1年は、疾風のように過ぎ去っていった。

刻一刻と受験の足音が近づいていた。


「旭の今の成績だと、この高校は少し厳しいぞ」


進路指導で先生から提示されたのは、自分の偏差値よりも少し上の高校だった。

けれど、そこは家から自転車で通える距離にあった。

何があっても自転車で通い、家計に交通費の負担をかけたくない――

旭にはそんな強い思いがあったのだ。


旭は塾に通わされることになった。

そこは、あの悪夢のような部活の仲間たちが大勢通う塾だった。

苦手な勉強、そして何より苦痛な人間関係。

それでも旭は必死に机に向かった。

すべては、あの居場所のない中学を抜け出し、高校へ行くために。


模試の判定はいつも合格ラインギリギリだった。

音楽の成績は「2」に落ちたまま動かず、数学も「2」、英語もパッとしなかった。

けれど、国語だけが得意で「4」をキープしていた。

1年生の時の担任が、国語の担当教諭だった。

どんなに努力しても成績に反映されず報われない日々が続いていたが、

3年生になり、偶然にもその先生が再び旭のクラスの担任になった。


そして、中学生活最後の日。手渡された通知表を開いた旭は、思わず息をのんだ。


「……え?」


国語の評価欄に刻まれていたのは、「5」の数字だった。

先生は、旭が誰よりも一生懸命に学校生活と向き合っていたことを知っていたのだ。

音楽の先生と親しかったことも、その関係が壊れて周囲から


「旭が何かやらかした」


と噂されていたことも――きっとすべてを分かった上で、

旭の努力を正当に評価してくれたのだ。

ハッとして顔を上げると、教壇の先生とふと目が合った。

先生はほんの僅かだけ、優しく頷いてくれた気がした。

旭には、その一瞬の眼差しだけで十分だった。

自分の歩んできた道のりを証明してもらえた気がした。


――そして迎えた、入試の合格発表当日。

高校の校門をくぐった旭の胸は、張り裂けんばかりに鳴り響いていた。

自己採点では数学が壊滅的だった。

逆に国語はほぼ満点に近い手応えがあったが、内申点の低さがどう響くか分からない。

周りには、同じ高校を受験した幼馴染や友達の姿もあった。


……〇〇番、〇〇番……。


貼り出された掲示板に、合格者の番号がずらりと並ぶ。


「……ない」

隣で幼馴染がぽつりと呟いた。


「私も……ないや」


友達も肩を落として呟く。

旭もダメかもしれないと絶望に押し潰されそうになりながら、自分の番号を探して視線を走らせた。


「――――っ!」


あった。

確かに、旭の受検番号がそこに刻まれていた。


その瞬間の感情は、今でもうまく思い出せない。

ただ、「受かった!」という喜びよりも先に、激しい申し訳なさが胸を締め付けた。

一緒に来た友達を蹴落として手に入れてしまった居場所のような気がして、妙に居心地が悪かったのだ。


それでも――自分は、受かったのだ。


「おめでとう、旭!!」


付き添ってくれていた母が、歓喜の声をあげて旭の肩を抱きしめた。

肩を落としてトボトボと帰り道を歩き出す友達の背中を見送りながら、

旭は母と共に合格者書類を受け取るため、静かに新しい校舎の門をくぐっていった。


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