十三節 空想
その頃、旭はオリジナルキャラクターを生み出すことに夢中になっていた。
幼馴染と一緒にたくさんのキャラクターを考案し、自分たちだけの物語を作った。
本屋に行っては『名付け辞書』を買い、
キャラクターに「こうなってほしい」という願いや思いを込めて名前を付けた。
そしてこの時期、旭は「好き」の先にある「萌え」という感情を知る。
大好きなアニメのキャラクターに思いを馳せては萌え、
その背後にあるストーリーや関係性を想像しては胸を躍らせた。
何より、友達に貸してもらった同人誌との出会いが、彼女の人生をさらに豊かに彩っていく。
(もともとあるキャラクターを、こんな風に自由に動かしていいんだ……!)
オリジナルしか知らなかった旭にとって、
完成された作品から新たな物語を生み出す「二次創作」の可能性は、雷に打たれたような衝撃だった。
パロディやアンソロジーの面白さにどっぷりとハマり、
「薔薇」や「百合」といった新たな世界の扉も開いた。
色々な人が紡ぐ自由な想像力に触れるのが、楽しくて仕方がなかった。
もし、このキャラクターがこんな風に思っていたら――。
もし、実はこんな背景があったとしたら――。
もし、あの時こうしていたら――。
「もしも」を重ねるたびに、視界が一気にひらけていく。
空想することによって、自分の中の世界はどこまでも無限に広がっていった。
現実がどれほど苦しくても、ここでは自由になれる。
何かを生み出せる。
ただそれだけで、旭の心は救われ、満たされていった。




