十節 変化
数年後、旭は中学生になった。
あれほど嫌い、頑なに拒み続けていたはずの、スカートの制服を身にまとって。
不思議なことだった。
あれだけ女を嫌悪していたはずなのに、いざその制服を着て鏡の前に立つと、
なぜだか胸の奥がほんの少しだけ、くすぐったいように浮き足立つ感覚があった。
(……なんでだろう。ボクは、スカートなんて大嫌いなはずなのに)
自分の感覚なのに、どこか他人のそれを見ているような奇妙なちぐはぐさ。
でも、旭はその違和感を深く考えず、ただ頭の隅へと追いやった。
「ねぇ、シノ。部活ってどんなことするんだろう。私の行く中学、演劇部がないんだって。本当に残念だな……」
旭は、自分の部屋でシノの大きな身体にそっと寄りかかりながら、ぽつりぽつりと話しかける。
「どうせ入るなら、大好きなあの声優さんが『好きだ』って言っていた、テニスをやってみようかな。シノはどう思う?」
シノは、何も言わずに鼻をぴくぴくとさせた。
「そうだよね。やってみて、もし嫌だったら辞めればいいもんね! それにね、部活をがんばって入ってた方が、高校に入りやすいらしいんだよ」
旭の言葉に、シノは大きな耳をぴくりと動かす。
「私、いろいろ調べたんだ。あの憧れの専門学校に行くにはね、ちゃんと高校を卒業してなきゃいけないんだって!」
旭は、未来の自分に言い聞かせるように勢いよく立ち上がると、拳をぎゅっと握りしめて言った。
「あの声優さんが通っていた、あの専門学校に、私は絶対に行きたいの。ちょっとでも、あの人に近づけるといいな……」
いつも短く切り揃えていた髪が、いつの間にか、少しだけ首筋にかかるくらいに伸びていた。




