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第97話 巻物探妖其の拾

「情けないな、村上」


「悪いのう、へま打った。助かったわ、刑部おさかべ

 村上に刑部と呼ばれた少年を、俺、穂月錬次は黙って見ているしかなかった。


「ま、待て!」

 不意打ちを受けた腹部が痛む。それだけでなく、全身を土塊で拘束され、身動きを封じられていた。


「待たんよ。あっしは忙しいけん」

 立ち去ろうとする刑部は、俺の声にも振り向かない。


「くっ……」

 このまま見送るしかない。


 俺が諦めかけた、その時だった。

 刑部へ向かって、一本の土槍が投げ放たれる。


「誰ぞ!」

 刑部は手にしていた土槍でそれを弾き、飛んできた方向へ顔を向けた。


「……今度こそ、本物だよな?」

 俺もそちらへ視線を向ける。


 木々の間に立っていたのは、土色の髪と厭世的な表情を持つ少年――槌屋堆志だった。


「何を言っている?」

 槌屋は俺の言葉に怪訝そうな顔をした。


 だが、自分と同じ制服を身に纏い、同じ土槍を持つ刑部の姿と、周囲の状況を見比べると、軽く頷いた。


「なるほど。穂月は、当方の姿をした偽物に襲われた訳か」

 槌屋は刑部へ冷たい視線を向ける。


「いいだろう。不愉快な猿真似は、当方自身で叩き潰してあげようか」

 槌屋は黄碧玉を掲げ、験力を込める。


 石から溢れた黄色い光が、土竜もぐらの式神を形作った。


「あっしは猿じゃない。狸なんよ」

 刑部も懐から黒曜石を取り出した。


 石から黒い靄のような光が溢れ出し、たちまち狸の姿をした式神となる。


「猿でも狸でも、どちらでも構わない」

 槌屋は素槍を構え、その穂先を刑部へ向けた。


吐石土竜どせきどりゅう!」

 槌屋が地面へ槍を突き刺す。


 途端に大地が波のように大きく畝り、刑部を飲み込もうと押し寄せた。


「吐石土竜ね。こうするんやろ?」

 刑部も同じように土槍を地面へ突き立てる。


 刑部の足元からも土の波が生じ、槌屋の術と正面から衝突した。

 二つの土波は互いを押し潰し、その場で崩れ落ちる。


「偶然、同じ能力だった訳でもなさそうだな」

 槌屋が苦々しく呟く。


「まあね」

 刑部は土槍を肩へ担ぎ、薄く笑った。


「あっしは『模倣もほう使い』なんよ」

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