第89話 巻物探妖其の弍
戸隠学園演習林、その東端。
折霜涼、漣蒼茉、槌屋堆志、笹舟喩能、そして俺、穂月錬次。
戸隠学園一年代表チームは、そこで試合の開始を待っていた。
「巻物を相手より多く集めればいいんだから、必ずしも甲賀学園チームと戦う必要はない。けど……あの様子じゃ、絶対にこちらへ仕掛けてくるよな」
俺は全員に聞こえるように言った。
「だろうね。それで、作戦はあるのか、リーダー?」
涼が茶化すように尋ねてくる。俺はそれに取り合わず、真剣な顔で答えた。
「連携も取らずに挑めば、強化合宿の二の舞になる。だからといって、この試合形式で固まって行動するのも得策じゃない。涼、頼んだ物は用意できたか?」
「もちろん。チャンネルも合わせてあるらしいから、すぐに使えるぜ」
そう言って涼は、アマチュア無線部から借りてきた人数分のトランシーバーを袋から取り出した。
「ありがとう。みんな、これを携帯して、何かあれば連絡してくれ」
「んで、連絡は取れるとして、具体的にはどう動くんだ?」
そこで、漣が尋ねてくる。
「この巻物探妖でまず重要なのは、演習林に放たれた式神と、相手チームの位置を把握することだ。笹舟さん、相手の索敵をお願いできるかな?」
俺は眠そうな顔をしている喩能に話を振った。
「わたしの能力なら相手選手の居場所は分かるけど、式神の位置は特定できないよ?」
「それで大丈夫だ。式神の方は涼、お前に任せていいか?」
「いいぜ。おれじゃ人間の位置は分からないけど、式神の気配を探れるからな」
涼は胸を張って答えた。
「笹舟さんは相手チームの監視、涼は式神の捜索。俺と槌屋、漣は三方向に分かれて巻物を探す。敵や式神を見つけたら、すぐ全員へ知らせてくれ」
「当方に異論はないよ」
「オイラもそれでいいぜ」
槌屋と漣が頷く。
「強化合宿の時みたいに、各自で勝手に戦うのはなしだ。離れていても、五人で動くぞ」
全員がトランシーバーを手に取ったところで、試合開始を告げる音が演習林に響いた。




