第83話 集団戦其の玖
「補欠チームは全員、一つ以上の紙玉を残している。対する代表チームの紙玉は、すべて失われた。よって、この模擬戦は補欠チームの勝利とする」
模擬戦を終え、旧校舎の前へ再集合した一年生十人に向けて、笹舟先輩が結果を告げた。
分かり切っていたことではある。
それでも、改めて敗北を宣告されると、胸の奥に重いものが沈んだ。
「午前の個人戦では代表選手が圧倒していた。それにもかかわらず、このような結果になった理由は分かるな?」
笹舟先輩の鋭い眼差しが、俺、穂月錬次へ向けられる。
「穂月錬次。言ってみろ」
「……俺たちが、チームとして碌に動けていなかったからです」
俺は苦々しい思いで答えた。
「そうだ。代表チームで連携が取れていたのは、貴様と折霜の二人だけだった。故に補欠チームは、まず二人の分断を狙った」
実際、涼が深林坊によって足止めされたことで、俺は単独で破竹灯を追わざるを得なくなった。
「その策が成功してしまえば、残る貴様らは烏合の衆にすぎん」
辛辣な言葉だったが、事実である以上、返す言葉もない。
俺たちは五人で戦っていたのではない。
俺と涼、そして残る三人が、同じ戦場にいただけだった。
「自分達にどれほど連携が欠けていたか、身をもって理解したな?」
笹舟先輩は、代表チームの面々を順に見回す。
「補欠チームにさえ勝てないその体たらくでは、甲賀学園の代表など到底破れん。したがって、貴様らには連携を改善するための課題をこなしてもらう。風切、説明を」
模擬戦を終えたばかりで身体は疲れているし、腹も減ってきた。できれば少しくらい休ませてもらいたいところだが、そういうわけにもいかないらしい。
「代表チームと、ついでに補欠チームにも、協力して昼食のカレーを作ってもらうよ」
風切先輩が楽しげに告げる。
「材料は用意してあるけど、僕たちは手伝わない。十人で役割を決めて、自分たちだけで完成させてくれ」
休ませてもらえるわけではなかった。ただ、空腹についてだけは察してくれたらしい。
それにしても、実戦訓練の次に課されたものが、まさかカレー作りとは。
その意図を測りかね、俺は用意されていく鍋と食材をただ眺めていた。




