第81話 集団戦其の漆
時は少し遡る。
僕、風見宙飛は深林坊と協力して漣蒼茉を倒していた。
(蒼茉は確かに強い。単純な戦闘力なら、一年の中では一番なんじゃないか?)
しかし彼とは幼少の頃からの長い付き合いだ。戦い方や癖も熟知している。
勿論、一対一なら相手にもならないが、二対一なら充分に勝算はある。
具体的には蒼茉が僕を意識し過ぎているきらいがあったので、その隙を深林坊に突いて貰った形だ。
そうして蒼茉の紙玉を全て割った後に、僕らはすぐさま破竹灯と戦っていた錬次に強襲を仕掛けたのだ。
「これで残りは二人か......」
笹舟喩能は真神に任せてしまってひとまず良いだろう。
問題は槌屋堆志だ。打ち合わせでは、彼の足止めは勿朽の役割と決めていた。
(彼女が心配だな……)
槌屋の実力は疑う余地も無い。
僕が敵わないのは当然としても、錬次を制圧したという事実は驚異であり、僕らには脅威となる。
勿朽も実力者だが流石に分が悪いだろう。
「僕は先に行くよ。二人も後から来て」
僕は深林坊と破竹灯にそう言って、全速力で駆け出した。
その頃、勿朽流華は槌屋に対して、苦戦を強いられていた。
流華は槌屋を発見した直後、隙を突いて彼の左肩の紙玉を割ることには成功した。
しかし、そこからは槌屋側の一方的な展開となった。
時間稼ぎを肝に銘じる事で、なんとか堪えてはいるが、既に彼女の紙玉は頭に付けた一つを残すのみとなっていた。
「勿朽さん。穂月にも勝てぬ君が、当方の相手にならぬことは分かり切っているだろう。にも関わらず、こうも足掻くということは、当方をここに留めることが目的かい?」
「何のこと? 私はあなたのような優等生に、あっさりと負けを認めるのが嫌なだけ」
流華は烏蛇の式神により勢いを増幅した水流によって、槌屋の枝分かれする土槍をいなしながら答える。
それが強がりなのは明らかだったが、それでも彼女の戦意は衰えていない。
「当方としても君ばかりにかかずらう訳にもいかない」
そこで槌屋の圧が増したのを感じ、流華は左手の水晶を強く握りしめる。
水晶の輝きが一層強まり、それに呼応して彼女を取り巻く水流も大きく畝る。
「無駄だよ」
槌屋の槍が地面を抉ったかと思うと、その周りの土を巻き込んでいく。
「土波突天」
土によって体積を増した槍の先端が、流華に襲い掛かった。
「くっ……」
槌屋の攻撃による衝撃で流華は耐え切れずに後ろに吹き飛ぶ。
辛うじて最後の紙玉は残っているが、彼女の四肢はボロボロになっており立つことも覚束ない。
「頭部に水流を集中させることで、紙玉が割れるのを防いだか。でもその脚じゃ、真面に動けないだろう?」
無感動に槌屋はそう言うと、留めを刺すべく槍を振り上げた。
「させない!」
その瞬間、槌屋の右肩に衝撃が走る。僅かな痺れに顔を顰めた彼が見たのは、割れた己の紙玉と、背後に立つ雷哉の姿だった。
「何だとっ!」
動揺した槌屋が態勢を立て直そうとしたその時、彼の頭上から破裂音が響く。
「水鉄砲の術、これであなたの負け」
槌屋が声の方向に居たのは、へたり込んだままの流華だ。
彼女は痙攣する右手の指で、いわゆる拳銃の形を作り、静かに笑んでいた。




