第79話 集団戦其の伍
集団戦が始まるとぼく、真神雷哉は玉髄の欠片を手に、子犬の式神を呼び出していた。
式神の使用目的はいくつかある。術の増幅の他には、探索の補助が挙げられる。
例えば犬の姿をした、この従属式神は嗅覚を用いての索敵が可能だ。
その捜索対象は笹舟喩能。彼女の足止めがぼくに課せられた任務である。
(見つけた)
ぼくは式神の力を借りて、喩能の居場所を見つけ出した。
「そこにいるのは判っているよ。出てきたら?」
しかし、様子を木の陰から伺っていたぼくに、彼女は言う。
「何で分かったの?って訊くまでもないか」
彼女は人の発する電磁波を読み取ることで思考を覗く。
なら笹舟先輩のように、電磁波での探索も出来るだろう。
「真神くんだっけ? 兄様がえらく気にかけているけど……わたし程度に怯えている君の、何を見出したのかな?」
渋々と木の陰から姿を現したぼくを、喩能はじっと睨む。
心を読まれているのだろうか? 当然いい気はしない。
(でも、それがどうした。その読心を阻止するためにぼくが来たんじゃないか!)
「怯えがあろうがなんだろうが、ぼくに期待してくれた人達に応えるんだ!」
身体に電流を通して神経を研ぎ澄ませ、ぼくは彼女へ突進する。
「電光石火!」
喩能は右手の十手を構えてそれに応戦するが、ぼくの動きの方が速い。
結果、ぼくの双剣は彼女の左肩に付いている紙玉を割ることに成功した。
「……兄様に教えて貰ったの? わたしが電光石火を使用している人の思考は読めないって」
やはり、そうなのか。
「直接は教えて貰って無いよ。笹舟先輩が電光石火を修得した理由から推理したんだ」
「ふーん……」
ぼくの言葉を受けて、喩能は考え込むような仕種をする。
「え、何を?」
ぼくがその様子を伺っていると、彼女はいきなり自分の右肩に付いている紙玉を、左手でぐしゃりと潰した。
「君の方が速いし、思考を読めないなら勝算も無い。結果は見えているよ」
喩能は頭に付けた紙玉も潰しながらそう言った。
(……そんなに簡単に諦められるものなのか?)
ぼくは何とも言えない気持ちで立ち尽くす。
「わたしにもう用は無いでしょ。早く他の人達に加勢した方が良いんじゃない?」
彼女の言葉はその通りだった。ぼくはそれに従いその場を後にする。
目的は果たした筈なのに、達成感はまるで無かった。




