表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
74/110

第74話 樹海焦がす雷迅

 模擬戦の最後は笹舟喩能と深林坊大樹の試合だった。

 二人はゆっくりと試合場に歩み出て互いに向き合う。


深林坊はいつも通りの気楽な雰囲気を纏っている。対する喩能は静かに相手を見つめ、右手で十手を構える。


「同じ組だけど、こうして戦うのは初めてだね、笹舟さん」

 深林坊が左手に持った蛋白石たんぱくせきを右手の木刀に添える。


蛋白石が乳白色の輝きを放ったと思った次の瞬間、木刀がまるで生きているかのように粘菌のような形態へと変形し、喩能へと襲い掛かる。


 しかし、蠢くように迫るその奇妙な攻撃を、喩能は僅かに身体をずらすだけで難なく躱した。

深林坊は木刀を巧みに操り、形を変え、攻撃の角度や速度を自在に変化させるも、喩能はまるで全てが予め見えているかのように、最小限の動きでそれらを避け続ける。


「何、あれ?」

 その異様な光景に真神が思わず呟いた。


「喩能は相手の心が読めるのだよ」

 そんな真神の疑問に答えたのは、隣で試合を見守っていた笹舟理界だった。


「えっ、どういうことですか?」


「私が動物の発する電磁波を感知出来ることは前に言ったな? 喩能はそれを更に高度に行える。相手の神経系から漏れ出る微弱な電磁波を感知し、それによってある程度の思考を読み取ることが可能だ」


「相手の思考を読む……そんなことが本当に?」


「思考全てが完全に読める訳では無いが、攻撃の意図や動きの予測程度なら容易い。深林坊のような特殊な攻撃も、その発動前の僅かな神経の揺れを捉えて、対処することが出来る」

 真神が驚きの声を漏らすと、理界は頷き、そう説明する。


 深林坊は攻撃を続けながらも、明らかに余裕を感じさせる喩能の表情に、苛立ちを覚えたのか、徐々に攻撃の速度を上げ、複雑さを増していく。


「なるほど、流石に代表に選ばれるだけのことはあるね。でも、いつまで避け続けられるかな?」

 深林坊が微かな笑みを浮かべて挑発すると、喩能は小さく息を吐いて十手を構え直す。


「そろそろわたしも動くね」

 その言葉を合図に、喩能が突然踏み込み、深林坊へと向かって行く。


 深林坊が驚きつつも防御の為に木刀を操作するが、その動きさえ彼女は読んでいるのだろう。僅かな隙間をすり抜け、喩能の十手が深林坊の胸元に寸止めされる。


「そこまで、第五試合の勝者は笹舟喩能」

 風切が試合の終了を告げる。


 深林坊は悔しそうに肩を竦めながらも、素直に敗北を認めたのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ