第71話 篝火吹き消す突風
(全然駄目だな、僕は……)
試合を終えて見物の位置に戻った僕、風見宙飛は深い溜息をついた。
(まあ、錬次を倒したと云う槌屋に、僕が相手になるわけないか……)
風見屍這を使えば勝機はあったかもしれない。だけど、あれはこんな大勢の前で、それもたかが模擬戦程度で披露すべきものではない。
僕がそんなことを考えている間に、中央に進み出たのは漣蒼茉と破竹灯篝。
次の試合はこの二人の対戦だった。
「行くぜ!」
破竹灯は渡された赤碧玉の欠片を手に験力を籠める。
赤碧玉から深紅の光が漏れ出し、火取蛾の姿を形作る。
そして破竹灯は拳銃を構えて、その銃口を蒼茉に向けた。
「来いよ」
対する蒼茉は全身を不気味に揺らしその場で舞踊を踏みだした。
破竹灯が拳銃から火炎の弾丸を放つ。蛾の式神によって強化されているのか、その炎は先日の体育祭よりも勢いを増している。
しかし、その弾丸は蒼茉に掠りもしなかった。
「虚実皮膜」
蒼茉が使用したのは、夏休みに修行した風見家に伝わる歩法術だ。
「ちっ、テメェもその妙な術を使うのかよ」
破竹灯が憎々しげに吐き捨てる。
虚実皮膜は距離を取るのが必須なので攻撃に転じるのは難しい。
僕が破竹灯と戦った時は小細工を弄したが……
(天性の瞬発力を持つ蒼茉に、その必要は無いだろう)
僕がそう考えるのと同時に、蒼茉は右手の飛去来器を破竹灯に向かって弓形に投げ付ける。
「這燕」
破竹灯がそれを拳銃で弾いた時には、蒼茉は既に破竹灯の懐へ滑り込んでいた。
「……ちっ」
蒼茉の左手の飛去来器を喉元に突きつけられた破竹灯は、悔しそうに拳銃を持つ手を下げた。
「そこまでだね。勝者は漣蒼茉」
風切の言葉と共に第二試合が終了した。




