第70話 旋風阻む大地
「午後は模擬戦を行います。君たちの対戦相手として補欠選手たちを呼んでいるので、校庭に出てきてください」
体力測定が終わり、昼食を摂った後、一年代表の五人に緋鞠先輩が告げた。
俺、穂月錬次が外に出ると、そこには五人の生徒が待っていた。
まず目についたのは、相変わらず陰気な顔をしている白髪の少年、風見宙飛。
その隣に、焦茶色の髪を後ろで一つに結んだ無愛想な少女、勿朽流華。
飴色の髪をした気弱そうな少年、真神雷哉。
葡萄色の髪をした荒々しい少年、破竹灯篝。
そして、俺と同じ房宿室の軟派な少年、深林坊大樹。
彼らが補欠選手のようだった。
「代表の五人は、苦手属性の相手と一対一で組手を行ってもらうよ。また、補欠の面々には媒介石の使用を許可する」
風切先輩の言葉と共に、模擬戦の幕が開けた。
最初は、槌屋堆志と風見宙飛の試合だった。
風切先輩が翡翠を宙飛に差し出そうとするが、「僕は使えないから」と言って、宙飛は翡翠を受け取らなかった。
二人は校庭の中央付近で向かい合う。
「始め!」
風切先輩の合図と同時に、槌屋が槍の石突で地面を打つ。
瞬間、土の柱が隆起し、駆け出していた宙飛の進路を阻んだ。
宙飛は地面を蹴り、軽く横へ跳ぶ。
だが、そこへさらに槌屋が追撃の土槍を放った。
「くっ……!」
宙飛は姿勢を低くし、紙一重でそれを躱す。
(相変わらず、嫌な攻め方をする)
槌屋は詰将棋のように着実な攻撃を続けた。
土壁で進路を塞ぎ、土槍で足を止め、少しずつ宙飛の逃げ場を削っていく。
ただ避けるだけでは、いずれ捕まる。宙飛もそう理解したのだろう。
彼は左手を前に出し、粗い突風を起こした。
校庭の土が巻き上がり、一瞬だけ槌屋の視界を覆う。
だが、槌屋は槍で、もう一度地面を叩く。
宙飛の足元から、土塊がせり上がった。
「がっ……!」
衝撃が宙飛の身体を打つ。
軽くのけぞった宙飛はそのまま尻餅をつき、どうにか体勢を立て直そうとする。
けれど、槌屋が再び地面を操ると、巨大な土塊が生じる。
その衝撃で、宙飛の身体は吹き飛ばされた。
大きく転がった宙飛は、苦悶の表情を浮かべて膝をつく。
「……ここまでか」
周囲で見守る先輩たちや一年の面々も、勝敗は明らかだと判断していた。
「第一試合は、槌屋堆志の勝利だよ」
審判役の風切先輩が試合の終了を告げる。
宙飛は悔しそうに拳を握りしめながらも、ゆっくりと立ち上がった。
そして槌屋に一礼し、舞台から下がっていった。




