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第68話 戸隠学園生徒会

 10月3日、月曜日の放課後。

 場所は、戸隠学園の中央に鎮座する黄宮こうきゅう棟。

 その一室、生徒会室である。


 そこには、今年の学園対抗戦に選抜された一年生代表が集められていた。


 槌屋堆志。

 穂月錬次ほづきれんじ

 折霜涼おりしもりょう

 そしてオイラ、漣蒼茉さざなみあおま


 対するのは、戸隠学園生徒会の三人。

 生徒会長、玄冬氷筍げんとうひょうじゅん

 副会長、緋鞠杜燃ひまりともえ

 庶務、白秋道縷はくしゅうみちる


 会計と書記は別件で席を外しているらしく、今日この場を取り仕切るのはこの三人だった。


「忙しいところ集まってもらって感謝するよ」

 玄冬会長が静かに口を開く。それだけで、部屋の空気が一段冷えた気がした。


「今年も学園対抗戦が近づいている。戸隠学園と甲賀学園の間で毎年行われるこの競争は、熾烈を極める」

 玄冬会長は、机に置かれた資料へ目を落とし、淡々と説明を始めた。


「具体的に、俺たちは何を求められているのでしょうか?」

 穂月が真っ先に手を挙げ、質問を投げかける。


「対抗戦には毎年、特殊な規則が導入される。しかし基本構造は変わらない。各学年から選出された代表五名が、集団競技で戦うことになる。その準備として、今年も一年の代表を対象とした強化合宿を開催する」

 玄冬会長は静かに頷き、そう語った。


「強化合宿?」

 折霜が首を傾げる。


「学園の外れにある旧校舎で、10月8日から10日まで、三日間にわたり訓練を行います。技量を高めることはもちろんですが、連携面での強化も重要な目的です。対抗戦は個人の力だけでは勝てませんから」


 答えたのは緋鞠副会長だった。緋色の髪が、窓から差し込む光を受けて淡く揺れる。


「三日間も訓練か……」

 オイラが小さく呟くと、白秋道縷が鋭い視線を投げかけてきた。


「何か不安でも?」


「いえ、そんなことは」

 反射的に背筋が伸びる。


「しかし、代表に選ばれるのは各学年五名と聞いていました。ここには、一年は四人しかいませんけど?」

 穂月が問いを継ぐ。


「残りの一人は、少し事情があってね。今日は呼んでいない」

 玄冬会長は苦笑する。


「だが、合宿には参加させる予定だ。そこは安心していい」

 呼んでいない。その言い方が、少し引っかかった。


「それで、合宿では具体的に何をするのですか?」

 槌屋が真剣な表情で質問する。


「最初は体力や基礎能力の測定を行います。その後、本番の対抗戦を想定した演習に移ります」

 緋鞠副会長が資料をめくる。


「実戦的な模擬試合、判断力を試す特別課題、そして代表同士の連携訓練。三日間で、あなたたちの弱点を可能な限り洗い出します」


「連携訓練……興味深いですね」

 穂月が落ち着いた口調で言う。


「それと、演習では一年生の補欠人員との模擬戦も行います」

 今度は白秋庶務が口を開いた。


「補欠人員と?」

 槌屋が怪訝な顔を見せる。


「補欠といっても、生徒会が選んだ精鋭だよ。代表ではないからといって、甘く見れば足元を掬われる」

 道縷の声音は淡々としているが、その言葉には妙な重みがあった。


「質問があれば受け付けるけど、どうだい?」

 玄冬会長が一同を見渡すが、誰も口を開かなかった。


「なければ、これで解散だ。詳細な日程は、追って各自に通達する」

 玄冬会長の一言で、全員が静かに席を立つ。


 学園対抗戦。

 どうやら、ただ戦えばいいという話ではなさそうだった。

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