表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
67/111

第67話 学園対抗戦

 10月2日、日曜日。

 オイラ、漣蒼茉さざなみあおまは、日課の走り込みを終えたところだった。


 汗ばむ額をぬぐいながら、朱雀寮の翼宿室へ戻る。

 扉を開けると、オイラの机の上に見慣れない封筒が置かれていた。


「……なんじゃらほい?」

 近づいて封筒を手に取る。差出人の欄には、厳かな字体で『戸隠学園生徒会』と記されていた。


「生徒会から当方と君に通達だ。内容は、読めば分かるだろう」

 部屋の奥にいた赤茶色の髪の少年、槌屋堆志つちやたいしが、彼らしい落ち着いた声で口を開いた。


 振り向けば、槌屋はすでに自分の封筒を手にしていた。

 普段は動かないその表情が、ほんのわずかに熱を帯びている。


 オイラは右手の指先で軽く風を起こした。刃のように細く絞った風が、音もなく封を裂く。

 中から取り出した手紙を一読し、その内容に思わず目を見開いた。


「学園対抗戦……?」

 手紙には、来たる戸隠学園と甲賀こうか学園の交流戦において、漣蒼茉が一年生代表選手の一人として選出されたことが、端的な筆致で記されていた。


 各学年から五名。代表生徒は、甲賀学園の代表と競技を行う。

 正式な印章が押されているのを見て、事の重大さがじわじわと胸に広がってくる。


「オイラが代表か……」

 戸惑いと、少しばかりの誇らしさがない交ぜになる。

 走り終えたばかりの脚が、また勝手に動き出しそうだった。


 『甲賀学園』

 滋賀の山奥にある、防衛大学附属高校の皮を被った忍術学園。

 戸隠学園と並んで、日本に存在が秘匿される二つの忍術育成機関のもう一校。


「面倒なことになったな……」

 苦笑混じりに呟く。けれど胸の奥では、静かな高揚が確かに芽生えていた。


「ん? ってことは……槌屋くんも選ばれたのか?」


「ああ。当然、当方にも届いている」

 その語り口には、微かな誇りと興奮が混じっていた。

 そんな空気を感じ、オイラの鼓動もまた一段と高まる。


「……少しは面白くなればいいけど」

 オイラはそう呟き、再び封筒を見つめた。


 自分がどこまでやれるのか。その答えを知るには、ちょうどいい。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ