第67話 学園対抗戦
10月2日、日曜日。
オイラ、漣蒼茉は、日課の走り込みを終えたところだった。
汗ばむ額をぬぐいながら、朱雀寮の翼宿室へ戻る。
扉を開けると、オイラの机の上に見慣れない封筒が置かれていた。
「……なんじゃらほい?」
近づいて封筒を手に取る。差出人の欄には、厳かな字体で『戸隠学園生徒会』と記されていた。
「生徒会から当方と君に通達だ。内容は、読めば分かるだろう」
部屋の奥にいた赤茶色の髪の少年、槌屋堆志が、彼らしい落ち着いた声で口を開いた。
振り向けば、槌屋はすでに自分の封筒を手にしていた。
普段は動かないその表情が、ほんのわずかに熱を帯びている。
オイラは右手の指先で軽く風を起こした。刃のように細く絞った風が、音もなく封を裂く。
中から取り出した手紙を一読し、その内容に思わず目を見開いた。
「学園対抗戦……?」
手紙には、来たる戸隠学園と甲賀学園の交流戦において、漣蒼茉が一年生代表選手の一人として選出されたことが、端的な筆致で記されていた。
各学年から五名。代表生徒は、甲賀学園の代表と競技を行う。
正式な印章が押されているのを見て、事の重大さがじわじわと胸に広がってくる。
「オイラが代表か……」
戸惑いと、少しばかりの誇らしさがない交ぜになる。
走り終えたばかりの脚が、また勝手に動き出しそうだった。
『甲賀学園』
滋賀の山奥にある、防衛大学附属高校の皮を被った忍術学園。
戸隠学園と並んで、日本に存在が秘匿される二つの忍術育成機関のもう一校。
「面倒なことになったな……」
苦笑混じりに呟く。けれど胸の奥では、静かな高揚が確かに芽生えていた。
「ん? ってことは……槌屋くんも選ばれたのか?」
「ああ。当然、当方にも届いている」
その語り口には、微かな誇りと興奮が混じっていた。
そんな空気を感じ、オイラの鼓動もまた一段と高まる。
「……少しは面白くなればいいけど」
オイラはそう呟き、再び封筒を見つめた。
自分がどこまでやれるのか。その答えを知るには、ちょうどいい。




