表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/6

第5話 又鬼ごっこ

 4月22日、金曜日の午後。

 僕ら一年玄武組の生徒は、戸隠学園の演習林、その北端に集められていた。

 鬱蒼と茂る森は、学園の敷地とは思えないほど広い。


(涼と錬次は別の場所で待機しているんだよな。合流しないかって誘われたけど……)

 僕、宙飛がそんなことを考えていると、担任の巌倉先生の重厚な声が、森の静寂を震わせた。


「これより、実戦演習『又鬼(またぎ)ごっこ』を開始する」

 巌倉先生の説明を、頭の中で整理する。


 規則は、だいたいこうだった。

 ・制限時間は3時間。

 ・範囲は演習林内、直径約3キロメートル。

 ・逃げ子は一年生の全4組、84名。

 ・鬼役は三年生の志願者20名。

 ・逃げ子は開始10分前に演習林内の好きな場所へ移動する。

 ・鬼は逃げ子を見つけ次第、手錠を掛けにいく。

 ・手錠を掛けられた逃げ子は即脱落。開始地点に自分で戻る。


(要するに、見つからなければそれでいい。幸い、林には木々や茂みのような遮蔽物がいくらでもある)

 鬼に見つかっても、手錠を掛けられなければいい。

 だから、戦うという選択肢もある。


(でも、相手は三年生だ。正攻法では、まず敵わないだろう)

 複数人で行動すれば、対抗できる可能性は上がる。

 その代わり、発見される危険も増える。

 僕のような人間は、たぶん一人で隠れていた方がいい。


「最後に、時間内にすべての生徒が捕まった組は、全員退学とする。覚悟して臨むように」

 巌倉先生の言葉に、生徒たちがどよめいた。


(退学だって? そんな簡単に言うなんて……)

 冗談だ、と誰かが笑うと思った。けれど、誰も笑わなかった。

 この学園なら、本当にやりかねない。そう思わせるだけの空気があった。


「風見」

 背後から声が掛かり、僕は振り返る。


 傷代苅砥(きずしろかると)

 鹿深珪晶(かふかけいしょう)

 真神雷哉(まがみらいや)

 僕と同じ玄武寮虚宿室(きょしゅくしつ)に住む三人が、いつの間にか集まっていた。


「俺たちは一緒に行動することにした。風見も来ないか?」

 傷代の提案に、僕は少しだけ迷った。

 彼らと行動すれば、確かに生存率は上がるかもしれない。


「断らせてもらうよ。足手まといにはなりたくないし、僕は独りの方が隠れやすい」


「……分かった。健闘を祈る」

 傷代は、僕の答えを聞くとあっさり頷いた。

 真神は残念そうな顔をし、鹿深は何を考えているのか分からない顔で同じく頷く。


 そのまま三人は森の中へと消えていった。

 次々に、他の生徒たちも森へ入っていく。

 それぞれが、自分の隠れ場所を求めて散らばっていった。


(僕も早く移動しないと……)

 周囲を警戒しつつ、僕も薄暗い木々の中へ足を踏み入れた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ