第4話 旧友と目標
4月17日、日曜日。戸隠学園の一角にある丑寅訓練場。
朝九時前に僕、風見宙飛がそこへ向かった時、待ち合わせ場所には、すでに二人の姿があった。
「遅いよ、宙飛」
刺々しく跳ねた紺色の髪をした、やや小柄な少年、折霜涼が弾むように言う。
「まだ待ち合わせ時間にもなってないだろ、涼」
それを、栗梅色の短髪をきちんと揃えた背の高い少年、穂月錬次がたしなめる。
「お待たせ、涼、錬次」
二人は、僕と同じ中学校に通っていた友人である。
しかし三人はそれぞれ別の組に配属されてしまったため、入学式からこちら、顔を合わせる機会はほとんどなかった。
「先生の攻撃、何だった? うちの担任は水で拘束しようとしてきたから、凍らせてやったぜ」
涼が得意げに言う。
「青龍組は、雷を放射状に広げてきた。大半は感電して動けなくなっていたな。俺はどうにか避けたが」
錬次は淡々と返す。
近況報告や雑談に花が咲く。
中学時代から、里の中でも涼と錬次は優秀だった。
それは、この学園でも変わらないらしい。
対する僕は、対人訓練でも術の暴発を恐れて連敗に連敗を重ねている。
少なくとも玄武組では、早くも最弱候補と噂されつつあった。
「二人とも、順調そうだね」
思わずそう漏らすと、錬次が真面目な顔で頷いた。
「せっかく戸隠学園に入ったんだ。高校生活の目標くらい、決めておいてもいいだろう」
「錬次、真面目~」
涼が冷やかす。
「俺の目標は、この学園の生徒会長になることだ」
「錬次、重ねて真面目~」
僕も悪ノリして言う。
「む。強さと人望を兼ね備えた者のみがなれる学園の顔だぞ。憧れるじゃないか」
「ふーん。錬次ならいけるんじゃね? なれる、きっとなれるよ」
「茶化すな、涼。そう言うお前の目標は何なんだ?」
「おれ? えーっと、そうだな。学園最強の忍者になる、ってのはどう?」
錬次が嘆息する。
まあ、涼はこういうやつだ。
「何だよ、その反応⁉ もういいよ。宙飛の目標は?」
「えっと、平穏な学園生活を送る……かな?」
二人のような大それた目標も、高い意識もない。
安寧こそが、僕の求めるところだ。
「えーっ、つまんないの」
涼がむくれる。
「宙飛、そう思う気持ちは分かるが、この学園でそれは難しいぞ」
錬次が残念そうに眉を下げる。
「一流の忍びになるために、厳しい試練がいくつも課せられるからな。特に来週に行われる実戦演習は、例年大変らしい」
「「実戦演習?」」
僕と涼の声が重なった。
「ああ。その名も、又鬼ごっこだ」
冗談みたいな名前を口にする錬次の顔は、少しも笑っていなかった。




