表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
41/50

第41話 えにし

「それで〜、玄冬先生の部屋で昔の写真を色々見せてもらったんだ〜」

 7月24日、日曜日の夜。玄武寮の女子浴場。

 うち、由密ざくろは、今日あった出来事を話す。


「ふぅん」

 そんな素っ気ない返答をするのは、うちと同室の女生徒、勿朽流華(くちなりゅうか)だった。


 彼女は湯船に身体を沈め、ゆっくりと肩をほぐしている。

 その肢体には余分な脂肪は一切なく、うちは最近あちこちに肉がついて来た自分の身体を見下ろし、少し凹む。


(いや、うちだって太ってはいないはず。この学園の生徒が、みんな体脂肪低過ぎる(やせすぎな)だけで)

 そんなどうでもいい思考を振り払うように、うちは話を続ける。


「自分が生まれる前の親の写真を見るのって、変な感じがするよね〜。思いのほか、うちに似てたんだって思ったよ〜」

 ちらりと横目で窺うと、勿朽は聞いているのかどうか分からない表情をしている。


「そういえば〜、その写真に勿朽ちゃんと似ている女性も写っていたな〜。勿朽ちゃんのお母さんだったりする〜?」


「さぁ、知らないよ」

 うちの言葉に、彼女はぴくりと眉を僅かに動かした。

 だが、すぐにいつもの不機嫌な表情に戻り、そう言った。


「そっか〜」

 うちは彼女の態度に違和感を覚えたが、触れない方がいいと思い、そんな風に頷く。

 勿朽は湯面を見つめたまま、少しだけ沈黙した。


「でも、玄の間にはもう入らない方がいいよ。平穏に過ごしたいなら……。風見くんや鹿深くんにも伝えておいて」

 勿朽はそう言って、湯船から上がる。


「珪くんはともかく〜、風見くんには自分で言いなよ。同じ班でしょ〜?」


「……じゃあ、私は先に部屋に戻っているから」

 うちの言葉に、彼女は振り返らずそう言って、浴室から出ていってしまった。


 うちは、閉まった浴室の扉をじっと見つめる。

 玄冬先生とうちの母。写真に写っていた、勿朽に似た人。それから、玄の間。

 知らないところで、いくつもの縁が絡まっている気がした。

一学期編、終。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ