第41話 えにし
「それで〜、玄冬先生の部屋で昔の写真を色々見せてもらったんだ〜」
7月24日、日曜日の夜。玄武寮の女子浴場。
うち、由密ざくろは、今日あった出来事を話す。
「ふぅん」
そんな素っ気ない返答をするのは、うちと同室の女生徒、勿朽流華だった。
彼女は湯船に身体を沈め、ゆっくりと肩をほぐしている。
その肢体には余分な脂肪は一切なく、うちは最近あちこちに肉がついて来た自分の身体を見下ろし、少し凹む。
(いや、うちだって太ってはいないはず。この学園の生徒が、みんな体脂肪低過ぎるだけで)
そんなどうでもいい思考を振り払うように、うちは話を続ける。
「自分が生まれる前の親の写真を見るのって、変な感じがするよね〜。思いのほか、うちに似てたんだって思ったよ〜」
ちらりと横目で窺うと、勿朽は聞いているのかどうか分からない表情をしている。
「そういえば〜、その写真に勿朽ちゃんと似ている女性も写っていたな〜。勿朽ちゃんのお母さんだったりする〜?」
「さぁ、知らないよ」
うちの言葉に、彼女はぴくりと眉を僅かに動かした。
だが、すぐにいつもの不機嫌な表情に戻り、そう言った。
「そっか〜」
うちは彼女の態度に違和感を覚えたが、触れない方がいいと思い、そんな風に頷く。
勿朽は湯面を見つめたまま、少しだけ沈黙した。
「でも、玄の間にはもう入らない方がいいよ。平穏に過ごしたいなら……。風見くんや鹿深くんにも伝えておいて」
勿朽はそう言って、湯船から上がる。
「珪くんはともかく〜、風見くんには自分で言いなよ。同じ班でしょ〜?」
「……じゃあ、私は先に部屋に戻っているから」
うちの言葉に、彼女は振り返らずそう言って、浴室から出ていってしまった。
うちは、閉まった浴室の扉をじっと見つめる。
玄冬先生とうちの母。写真に写っていた、勿朽に似た人。それから、玄の間。
知らないところで、いくつもの縁が絡まっている気がした。
一学期編、終。




