第34話 風をあつめて
6月26日、日曜日の午前中。
あたし、羽妙之楓は保健室の備品置き場で、今日も在庫確認をしていた。
昨日は宙飛に手伝ってもらったが、彼も今日は飼育委員の仕事があるらしい。
さすがに頼れず、宙飛に教えて貰った方法を用いて、あたしは一人で作業している。
「やっぱり一人だと、なかなか進まないなぁ」
そんなことを呟きながら作業していると、何やら扉の外が騒がしい。
「……さんも、……を……きたの?」
「……つに、わた……そんな……」
「千峩くんと勿朽さん、どうしたの? 今日は当直じゃないよね」
気になって扉を開けると、そこにいたのは、まだら髪の野生的な少年、千峩白牙と、焦茶髪の無愛想な少女、勿朽流華だった。
「羽妙之さんを手伝いに来たんだよ。そしたら、勿朽さんがそこの扉の前でうろうろしていたんだ。じゃあ勿朽さんも同じだと思って」
「いや、私は……その……」
快活に笑う千峩くんとは対照的に、勿朽さんは非常にばつが悪そうにしている。
「手伝いって、でも……何で?」
「一人じゃ大変でしょ? 昨日俺っちは当直で保健室から離れられなかったけど、今日は予定もないからさ。勿朽さんもそうなんでしょ?」
「……昨日、羽妙之さんが風見くんと何か調べていたの、気づいていたから」
「でも、先輩たちの言う通り、あたしの心配しすぎかもしれないよ?」
「まあ、俺っちは頭良くないから、羽妙之さんの言っていることが正しいのかはよく分からないけど、真剣な人の匂いは分かるつもりだよ」
「羽妙之さんが正しいかどうかは関係ないよ。私も、孤立しがちだし……見ていられなかっただけ」
「ありがとう、二人とも」
そうして勿朽さん、千峩くんの助けも借りながら、あたしは備品の消耗率をまとめることができた。
そして6月30日、木曜日の放課後。
「ふむ、よくまとまっているね。これなら去年度との差異がはっきり分かる」
生徒会室であたしたちが作成した資料を眺めながら、風切先輩はそう言った。
「で、では」
「ああ、確定ではないし、増額できる額には限りがあるから、そんなに期待しないでほしいが、今期の予算を増額できる見込みは充分にあるよ」
「ありがとうございます。よく頑張りましたね、羽妙之さん」
風切先輩の言葉を受けて、同行していた北琴先輩も、あたしに労いの言葉を掛けてくれた。
結局、保健委員の予算は増額され、備品も購入することができた。
けれど、あたしが望んでいた量には届かなかった。
それでも、前みたいに一人で焦っているだけじゃなかった。
宙飛も、勿朽さんも、千峩くんも。
あたし一人では、きっと現状を動かせなかった。
そう思うと、胸の奥が少しだけ誇らしくなった。




