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第28話 千峩白牙

 6月20日、月曜日。

 僕、風見宙飛は授業を終え、寮へ戻る準備をしていた。


「かざみん、いるー?」

 遠くからそんな声が聞こえてきたので視線を向けると、教室の外に男子生徒が立っていた。


「千峩くん、どうしたの?」

 白と黒が混じるまだらな髪。野生的な大きめの目。

 男子にしては小柄だが、ひ弱そうな印象はない。


 彼の名前は千峩白牙(ちがびゃくが)

 保健委員の一年で、僕が保健室の世話になることが多いせいで知り合った、気さくな少年だ。


「りょーちん、知らない? 昨日から帰ってないんだよね」


「涼が?」

 そういえば彼は白虎寮生で、涼と同室だったな。


「うん。同じ班の御影さんも欠席しているし、心配だよ」

 昨日は二人で出かける予定だったはずだ。

 僕も連絡してみるか。


「電話も繋がらないな」

 涼の携帯にかけても通じない。


「確かに心配だね。探しに行こう」

 不穏な予感を拭いきれず、僕はそう言った。




「かざみん、二人は昨日ここに来たのか?」

 一時間後、僕と千峩はある書店の前に来ていた。


「おそらく。この辺で本屋といえばここくらいだからね」

 戸隠学園は長野の山中にある。

 近くの町も、何軒も書店があるほど大きくはない。


「さて、これからどうしようか?」


「俺っちに任せろ」

 僕が思案していると、千峩はそう宣言する。


「『獣化(じゅうか)の術』!」

 彼の顔の毛が濃くなり、鼻の辺りが黒くなっていく。


「この特徴は、鼬鼠(いたち)?」

 千峩の忍術は、身体の一部を獣に変えるというものなのだろう。


「いや、(てん)だよ。かざみんもまだまだだね」


「……そんな一部だけで判別できるわけないだろうが」

 むしろ、イタチ科だと分かっただけ充分だろ。


「すんすん。りょーちんと御影さんの匂いだ」

 千峩は両手を地面につけて屈むと、ひくひくと鼻を鳴らし、そう呟く。


「辿れそう?」


「うん、何とかね。ついてきて」

 彼は地面の匂いを嗅ぎながら、僕に答える。


 人通りの少ない路地へ入るなり、千峩は四足で駆け出した。

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