第20話 野盗
5月21日、土曜日の朝八時。
僕、宙飛はまた第二備品倉庫に来ていた。
「おはよう、深林坊くん。来たよ」
僕は室内にいた深林坊にそう声を掛ける。
「待たせたね、宙飛くん。早速だけど、これが君のために選んだ武器だ」
そう言って、深林坊は一振りの忍者刀を僕に差し出した。
白地に茶色の斑模様をした柄。
刀身は忍者刀にしては短いが、脇差と言うにはやや長い。
刃幅は狭く、刃厚も薄い。
「軽いね。それに、持ちやすい」
僕は刀を受け取り、矯めつ眇めつする。
「取り回しの良さを追求してみた。宙飛くんは、刀を遠心力任せじゃなく、身体の一部であるように振っているよね。だから、重心が腕の近くに来るような刀を選んだよ。ただ、軽い分、耐久性は落ちる。あまり無茶な使い方はしないように」
「ありがとう。ちょっと試し振りしてみてもいいかな?」
その言葉に笑みを返す深林坊を残して、僕は外に出る。
「それが新しい刀? 使い心地はどう?」
しばらく新しい忍者刀を使って型稽古をしていると、楓がやってきた。
「いい感じだよ。試してみる?」
「いいよ。また胸を貸してあげる」
僕の言葉に、楓がニヤリと笑んだ。
それから深林坊を呼び出した僕と楓は、倉庫の前で互いに向かい合う。
楓は前回と同じく、短刀を片手で持ち、脇構えに近い低い姿勢を取る。
僕は忍者刀を片手上段に構えた。
「では、はじめ!」
深林坊の合図と共に、僕は距離を詰める。
そのままの勢いで袈裟懸けに斬り掛かるも、楓の短刀にいなされる。
続けて、僕は上段の右蹴りを繰り出した。
楓は左腕で防御するも、耐え切れずにたたらを踏む。
その隙をついて、僕は忍者刀を閃かせた。
楓はなんとか短刀で弾く。
だが、僕の左掌はすでに楓の額の前へ向けられていた。
「そこまで!」
深林坊の決着を告げる声が響く。
「はぁー、強くなったね、宙飛くん。まるで別人みたいだよ」
「しっかり身体を休ませたし、なんといってもこの刀のおかげだよ。改めてありがとう、深林坊くん」
僕が感謝を告げると、深林坊は柳色の髪を掻いて笑う。
「そう言ってもらえると、厳選した甲斐があるね。そうだ、その刀の銘は決めたかい?」
「僕は武器に名前なんて付けていないけど」
「おいおい、自分の命を預ける武具には愛着を持って接しないと、バチが当たるぜ」
「そういうものなの?」
僕は手の中の刀を見る。
「うん、じゃあ『野盗』。それがこの刀の銘だ」
字は異なるが、好みの鳥に因んでそう名付ける。
山の上空を旋回し、機を逃さずに獲物へ急降下する、猛禽の名だ。
「いい名前だと思うよ」
そう言って、深林坊は満足そうに頷いた。
こうして僕は、新しい忍者刀を手に入れた。
一歩前に進んだような気がする。




