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第19話 深林坊大樹

 5月15日、日曜日の朝。

 僕、風見宙飛は第二備品倉庫に来ていた。


「おはよう、宙飛くん」

 扉の前には、楓が眠そうに立っている。


「おはよう。楓も来たんだ」


「うん、手伝うって言ったし。それに、彼に頼むのなら、あたしもいた方がいいと思って」


「? よく分からないけど、ありがとう。錬次は中かな?」


「分かんない。あたしも今来たところだし」

 扉を開けると、倉庫の中には所狭しと武具が鎮座していた。


 耳を澄ますと、奥の方から物音が聞こえる。

 僕らがその音源に向かって進むと、二つの人影が見えてきた。


「お、来たか。おはよう、二人とも」

 人影の片方、錬次が僕たちに気づいた。

 だが、もう一人は一心不乱に何かを弄っている。


「おい、深林坊。お前に来客だぞ」


「んー?」

 深林坊と呼ばれた人物は手を止め、僕の方を向いて立ち上がる。

 かなりの背丈だ。錬次も背の高い方だが、それ以上ある。百八十センチちょっと、くらいだろうか。


 彼が弄っていたのは……武器だよな?

 原形を留めないほど手を加えられていて、元が何だったのかもよく分からない。


「あぁ、君が穂月の言ってた宙飛くん? (おのれ)は一年青龍組の深林坊大樹(しんりんぼうたいじゅ)

 柳色の短髪をかきながら、彼が自己紹介をする。


「僕は一年玄武組の風見宙飛。君が僕の武器の相談に乗ってくれるの?」


「あー、そういう話だっけ。どうしようかなぁ。気乗りしないなぁ」


「あたしからもお願い。宙飛くんの力になってあげて」

 気だるげな態度を見せる深林坊に対して、楓が前に出て上目遣いで言う。


「女の子にそこまで頼まれたら断れないな。しょうがない、引き受けてやるよ」

 すると、深林坊の態度が豹変した。


「……助かります。これが今使っている武器なんだけど」

 彼の軟派な物言いが少し不安だったが、ともあれ僕は忍者刀を差し出す。


「ふむ、標準型の忍者刀だな。んー」


「どうかな?」


「武器だけ見ても、君に合うかは分からないかな。ちょっと君の戦い方を見せてくれる? そうだな、ここは狭いし、外へ行こうか」




 四人は備品倉庫の外に出た。


「それで、誰とやるの?」


「あっ、じゃあ、あたしが。宙飛くんがどれだけ強くなったか確認したいし」

 僕の問いに、楓が答える。


「……僕は楓と戦った記憶はないんだが」


「そうだっけ? まぁいいじゃん」

 楓は短刀を片手で持ち、脇構えに近い低い姿勢を取る。

 対して、僕も忍者刀を片手正眼に構えた。


「では、はじめ!」

 錬次の合図と共に、僕は駆け出す。


 袈裟懸けの斬撃を繰り出すも、楓はあっさりと避けた。

 その後も、僕は攻撃を繰り出す。

 しかし彼女は避け続け、避けきれない斬撃だけを短刀でいなす。

 楓は僕の攻撃を大きく避けない。

 一歩、半歩、必要な分だけずれる。

 そのせいで、僕だけが余計に動かされていた。


(風見屍這も使えないな。あれは相手の隙を突く技術だから、こう受けに専念されると……)

 剣戟に織り交ぜて竜巻を見舞う。

 だが、楓は同じように竜巻を生み出し、相殺する。


「はぁ、はぁ……」

 次第に息が切れ、右腕が重くなる。


「隙あり!」

 それを見逃す彼女ではない。僕の首元に、短刀の鋒が向けられた。


「そこまで!」

 錬次の声が響く。


「まだまだだね、宙飛くん」


「ずるいよ、楓。攻撃せずに僕が疲れるのを待つなんて……」


「これも戦術だよ」

 それもそうだ。

 また一つ、改善すべき点が見つかったと考えよう。


「なるほどね。君に適した武器が、だいたい分かったよ」

 黙って見ていた深林坊が口を開いた。


「本当?」


「ああ、見繕ってやるよ。そうだな……来週末にまたここに来てくれ」

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