第121話 篝火
俺様、破竹灯篝は忍びであるが、忍びの家系に生まれてはいない。
俺様は物心ついた時から火の忍術を使えていたらしい。
まあ、その頃のことなんざ覚えちゃいない。俺様を捨てた、一般人の親たちの記憶と同じ様に。
「やっぱりここにいたんだ」
11月15日の火曜日。白楸棟二階にある家庭科室で俺様が昼食の準備をしていると、背後から聞き慣れた声がした。
「よぉ慈雲、お前も食べるか?」
俺様は振り返り、彼女にそう尋ねる。
榎根本慈雲。山吹色の髪を右後ろで無造作に纏めた少女。しかし、飾り気の無いその顔はどこか少年にも見える。
「それじゃあ、お言葉に甘えて。当局の分も頼むよ」
「任せろ」
千切りにした長葱を中華鍋へ放り込み、卵、冷や飯の順に手早く炒める。強火で鍋を振ると、二人分の炒飯がすぐに出来上がった。
「いつもながら美味しそうだね。いただきます」
慈雲は早速、炒飯を口へ運ぶ。
「で、何の用だよ?」
俺様も炒飯を食べながら、慈雲に問いかける。
「うん?」
「お前いつもこの時間は、無線部だかなんかの部室に引きこもっているだろ?」
「ふふ、鋭いね。実は、先生から貴局のことで釘を刺されたんだよ。さすがに授業をサボり過ぎ、このままじゃ進級も怪しいってね。」
「別に俺様は進級できなかろうが退学になろうが構わないんだけどな」
「ちゃんと卒業はしといた方がいいよ。折角こんな学校があるんだから」
「お前は俺様の保護者かよ」
「保護監督代理人ではあるかな。当局は貴局たちのね」
「お節介はあの親父譲りだな」
「……それはともかく、貴局の話だ。授業に出ないなら、せめて試験では良い成績を取るように。当局が掛け合った結果、そんな形に落ち着いたよ」
「だけど、俺様の頭の悪さはお前も知ってんだろ?」
「そうだね、ちなみに二学期の中間試験の総合順位は?」
「79位だ……」
「……これは難易度が高そうだ。学校からの要請では、少なくとも平均以上を取るようにとのこと。今年の一年は現在81名だから、だいたい40位以内に入る必要があるわけだね」
「いや無理だろ……」
「無理ゲーでもやるんだよ、当局が教えてあげるから。放課後、当局の部屋に来るように」
「……仕方ねぇな」
昔からこいつには逆らえない。俺様も覚悟を決める必要があるようだった。




