第112話 宙飛の文化祭其の裏
「ひゃめてくらはい」
勿朽実滝は頬を両側に引っ張られながら、そう言った。
「え〜いいじゃん。流華ちゃんは絶対にこんなことさせてくれないんだし〜」
うち、由密ざくろはそう言って彼女の頬から手を離す。
「お姉ちゃんにしないなら、わたしにもしないでくださいよ」
玄武寮の女宿室。うちと流華が使っている部屋。
そこでうちは流華の妹、実滝と戯れていた。
お化け屋敷の取り仕切りに一段落つけて、部屋に戻ると流華と実滝がそこにはいた。
部屋に入った瞬間、うちは今朝とは明らかに違う二人の雰囲気に気づいた。
しかし、何かあったのか尋ねようか逡巡している間に、流華は「お化け屋敷のシフトに戻るから、実滝をよろしく」とうちに告げた。
忍術で水流を生み出し、着物をずぶ濡れにしてから部屋を出ていく彼女を実滝と一緒に見送った。
「お姉ちゃん、濡れた着物で過ごして風邪をひかないか心配です。ただでさえ、この辺りは寒いのに」
「大丈夫だよ〜。水を保持して蒸発を防げば、気化熱で冷えることは無いって、流華ちゃんも言ってたし〜」
「そうなんですか。きか熱?についてはよく分かりませんが……」
「実滝ちゃんも同じことができるんじゃないの〜?」
「わたしはそこまで水を自在に操れません。冬場に忍術を使う時は、いつも凍えています」
「そうなんだ〜。それより、流華ちゃんのことをもっと聞かせてよ〜。昔からあんなにツンツンしてたの〜?」
「いえ、昔のお姉ちゃんはもっと柔らかかったですよ。わたしも小さかったからよく覚えていませんが……中学生になった頃から、人と距離を置くようになった気がします」
「ふ〜ん、その頃に何かあったのかな〜?」
「多分その辺りで、勿朽家の宿命を……いえ、なんでもありません!」
「厨二病ってやつ〜? 実滝ちゃんも来年中学二年生でしょ〜、気をつけなよ〜」
「違いますって!」
これ以上は突っ込むべきではないと思い、うちはそう茶化す。
(でも、いつか話してくれるようになったらいいけどね)
うちは心の中で、そう思った。




