第106話 宙飛の文化祭其の肆
「と云う訳で鹿深くん、協力してくれないか?」
僕、風見宙飛は玄武寮虚宿室に戻ると、同室の鹿深珪晶に相談を持ちかける。都合の良い事に同室の残り二人、真神と傷代は既にお化け屋敷のシフトに出ていたので、部屋には彼だけだった。
「どう云う訳かな?」
鹿深はそう言って、その三白眼で僕を見据えた。
(漫画みたいに場面転換はできないか)
冗談は兎も角、僕は勿朽家や玄武の詳細は伏せて、勿朽実滝の事と、鹿深にもう一度玄の間に通じる扉の解除をお願いしたいという旨を話す。
「何を企んでいるかは知らないけど、承知した。協力するよ」
鹿深はお化け屋敷用の仮装(河童)に着替えながら、僕の話を聞いた後、そう答えた。
(……関係無いけど、河童の仮装にしては格好良すぎるな。それに頭の皿が硝子製なのはどうなんだ?)
「ありがとう」
「いいさ、退屈凌ぎにはなるだろう」
「じゃあお化け屋敷のシフトが終わった後、玄楡棟の正面入口集合でお願い」
僕は実滝にも告げた集合場所と時間を鹿深に言った。
「解錠完了。では手前は此処で見張っておくよ」
鹿深は鍵穴から変形させた硝子を引き抜き、僕らにそう言った。
「ありがとう、鹿深くん」
玄楡棟の奥に存在する黒曜石の扉の前に僕、鹿深、実滝は来ていた。
「手早く済ませなよ。また玄冬先生に見つかったら、苦言では済まされないだろうからね」
鹿深の言う通りだ。玄の間を管理するのは三年玄武組の担任教師・玄冬氷冥。
前回忍び込んだ時のように彼女に遭遇する訳にはいかない。迅速に調査を遂行して戻って来る必要がある。
「了解したよ。じゃあ実滝ちゃん、行こうか」
「はい。ありがとうございます鹿深さん」
そして僕と実滝はその扉から地下へと降りていく。
文化祭の喧騒が、背後で扉が閉まると同時に遠ざかっていった。




