第103話 宙飛の文化祭其の壱
一部の選ばれし生徒たちが鎬を削った学園対抗戦も終わり、その他大勢の生徒が熱狂する戸隠学園文化祭がやってくる。
(なんて、少なくとも僕は大して興味も無いんだけど……)
10月31日月曜日の午後。一年玄武組の教室では、来たる文化祭に向けての学級会が開かれていた。
僕、風見宙飛はその話し合いをおざなりに聞きながら、窓の外の空に浮かぶ鱗雲を眺めていた。
戸隠学園の文化祭は、忍術学園の実態を隠した上で一般公開される。学園側はこれを陽忍としての偽装や交渉の実践授業だとして行なっている節もある。
だから僕のような、陰気で人付き合いの苦手な人間からすると憂鬱な行事である。
(だから、なるべく関わらずにやり過ごしたい。見たところ、そう思っているのは僕だけじゃなさそうだね)
傷代苅砥は腕組みをして目を瞑っているし、勿朽流華に至っては机の陰で開いた文庫本を読んでいる。
「それでは〜、我がクラスの出し物はお化け屋敷に決定します〜」
クラス代表の由密ざくろが間延びした声で、そう告げるのを僕はぼんやりと聞いていた。
それから二週間近くが経った、11月12日土曜日。戸隠学園文化祭一日目が始まる。
「しかし、服装凝りすぎじゃない? 渋谷のハロウィンにでも行くのかよ……」
僕は修験者の装束一式に鴉の仮面、つまり鴉天狗の仮装を身に纏い、そうごちる。
「何事も形からだよ〜」
この衣装を仕立てた由密は呑気にそう言う。
「由密さんのそれは、何の仮装なの?」
頭に赤い花を付け、葉っぱのような衣装を身に纏った彼女に僕は尋ねる。
「これは古椿だよ〜」
「またマイナーな……」
由密が告げた妖の名を聞いて僕は苦笑いをする。
「ほらほら、風見くんはここに潜んでお客を脅かしてよ〜。うらめしや〜って」
「鴉天狗が『うらめしや』はおかしいだろ」
天狗は幽霊じゃない、形も何も無いじゃんか。




