第119話
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「ホッホッホ!よくぞいらして下さいました。儂はこの郷で郷長を勤めておる者です。以後よろしくお願いいたします」
どうやら、ガルムの時と同じ様に、ウシュムさんが予め連絡をしていたらしく、広場へと降り立った俺達が、一応とばかりに柵で囲まれている方へと移動しようとした時には既に、目の前のお爺さんが出迎えてくれていた。
恐らく、ウシュムさんの実家と何処かで繋がりがあり、大体の到着時間を予想した上で待機していたのか、それとも到着を目視してからこちらに来てくれたのかは不明だが、一応は『来賓』である俺達の為に目的地までの案内等をしてくれる為に出て来てくれたのだろう、と推測する。
そんな気遣いを有り難く思うと同時に、でもこんな年寄りのじい様がわざわざ迎えに出てこなくても良くないかね?だとか、それでも暇な老人を遊ばせておくよりかはまし、という事なのか?だとか、今このじい様『郷長』って言わなかったか?だとかの思考が過るが、挨拶された以上は返さねば失礼に当たる為に、取り敢えずこちらからも挨拶を返しておく。
「……いえいえ、こちらこそわざわざ出迎えありがとうございます、郷長殿。すでにお聞きかも知れませんが、この度ウシュムガルさんとの婚姻の報告の為に来させて頂きました、魔王国にて魔王を務めさせて頂いております、ジョン・ドウと申します。以後お見知り置きを」
そう言いながら、軽く頭を下げて手土産を渡す。
こちらでの作法でどうなっているのかは不明だが、まぁ中身が中身だけに、渡しておいて損にはならないだろう。
「ホッホッホ、これはこれはご丁寧に。……して、この芳醇な香りと波打つ様な感触はもしや……?」
「ええ、恐らくは長殿の予想の通りかと。我が国にて生産された物ですので、どうぞお納め下さい」
竜への贈り物と言えば、やっぱり『貴金属』の類いか、もしくは『酒』と相場が決まっているでしょう?
ウシュムさんも割りと呑む方だったし、宴会の類いに紛れ込んでいたりする竜族のお嬢さん方も、そこらの自称酒豪を軽く酔い潰したりしている位なのだから、多分喜ばれるハズだ。
現に、受け取った郷長も、元より柔和な顔立ちを更に緩め、軽く手に持った俺からの手土産(With樽)を軽く上下させ、その中にタップリと詰まっている事を確認すると同時に、中にどれくらい入っているのかを重量から推測する位には喜んでくれているみたいである。
「ホッホッホ、そうですかそうですか!異国の酒とは珍しいですからな、後で頂く事にいたしましょう。この歳でここまで心が踊るとは、長生きはするものですなぁ」
そこまで喜んでくれるのであれば、こちらとしても贈り甲斐があったと言うモノだ、と思っていると、それまで俺の隣で只微笑んでいたウシュムさんが、郷長のじい様へと声を掛けた。
「そろそろ宜しいのではないでしょうか?いい加減、旦那様の人柄も理解出来たでしょうし、こんなところで立ちっぱなしと言うのも、些か不作法ではないでしょうか?ねぇ、お祖父様?」
…………え?なにソレ?俺聞いてないんだけど?
そんな思いを込めて、二人の間を視線で往復すると、それまで柔和な好好爺然とした笑みを、何処か悪戯小僧の浮かべる様なソレを滲ませたモノへと変化させた郷長のじい様が、改めて俺へと声を掛けて来た。
「おやおや、もうばらしてしまうとは、我が孫娘も困ったモノじゃのぅ。
と言う訳で、改めて自己紹介しておくと致しましょう。儂が、この郷の郷長にして、ウシュムガルの祖父でもある『ガルグイユ』と申します。今度こそ宜しくお願い致しますぞ?婿殿よ?」
そう、こちらをからかう様な笑みを浮かべた顔をままに、俺達に先立って郷の中へとガルグイユのじい様は入って行くのであった。
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「……さて、では改めて、ウシュムガルの祖父であるガルグイユじゃ。此度は婚姻の報告の為の帰郷である、との話であったが、それは真かね?」
ガルグイユのじい様の案内にて、ウシュムさんの実家へと到着した俺達は、居間へと通されてお茶を出される(郷長と言うだけあってお手伝いさんの様な方も居た)のとほぼ同時に、自身の席の隣に置いた樽を撫でているじい様からそう声を掛けられる。
「……それは、一体どう言う事でしょうか?お祖父様とは言えども、私と旦那様を侮辱する事は許しませんよ……?」
それを聞いたウシュムさんが、瞬間湯沸し器も真っ青な程の速度で感情を爆発させ掛けるが、それをどうにか押さえて貰い、僅かに漏れでた殺気によって冷や汗を流しているガルグイユのじい様へと、今度はこちらから問い掛ける。
「……『婚姻の挨拶は真なのか』と言われても、こうして実際に挨拶に来ている以上は当然の話なのでは?」
「……まぁ、それはそうなのじゃが、一応は確認しておかねばならぬのでな」
俺がどうにか宥めた事により、流していた冷や汗を拭ったガルグイユのじい様が続ける。
「儂も、こうして長生きしておる以上は、お主達の様に他の種族のも者と婚姻を結ぼうとしていた者達を知っておる。故に、こうして問うておるのじゃよ。互いに好きあっておるのは見れば解るが、互いの文化的な齟齬や習慣の違い、子が出来るか否か、寿命の違いによる片方だけがあっという間に老けて行く現実等々、問題点は幾らでも有るのじゃが、それらを一体どうやって解決するつまりじゃ?
……儂とて、ウシュムガルは可愛い孫娘であり、その孫娘の目にかなった者であれば、別段とやかく言うつもりは有りはせぬ。じゃが、実際に二人の前へと『壁』として立ちはだかるであろう問題に対して、ただ好きだから、と言う理由はあまりにも脆い。故に、具体的にどうするつもりなのか、と問いたいのじゃよ。答えてはくれませぬか?魔王にして孫娘の思い人であるジョン殿よ?」
その質問に対して俺とウシュムさんは、互いの顔を見合わせると軽く吹き出しながら、不思議そうな顔をしているガルグイユのじい様へとこう返答する。
「「その辺は大丈夫。元より解決しているから」」
と。
その返答を予期していなかったらしいじい様が、間の抜けた顔をしていたが、それに構わず俺達の種族が『神』の類いになった事、それにより寿命だとか老化だとかの心配からは解放されている事、文化的・習慣的な齟齬の類いは既に色々やらかした後であり、もう擦り合わせは終わっている事等々を語って聞かせる。
すると、最初の方こそ愕然とした顔をしていたガルグイユのじい様だったが、途中からは半ば呆れ顔となり、最後には自身の心配は全て杞憂であったと理解したからか声を挙げて笑っていた。
「……ホッホッホ!成る程、成る程!それらの偉業を達する程の荒男であれば、ウシュムガルを任せるのに不足は無さそうですな!
……いやはや、ウシュムガルが婿を連れて挨拶に来るってと聞いた時には、もし万が一軟弱な者でも連れてくれば、恨まれるのを覚悟の上で叩き潰し、郷の男でもあてがわねばならぬか、とも思っておりましたが、全て無駄になりましたな!これで、儂も安心して『最後の仕来たり』を行えると言うモノですのぅ」
そう、機嫌良さそうに言い切ると、俺が『最後の仕来たり』?と突っ込みを入れるよりも先に立ち上がり、
「では、行きましょうか」
と声を掛けてくる。
それに対して俺が
「……?何処へですか?」
と答えれば、一瞬キョトンとした顔をしてからウシュムさんへと視線を向け、まるで『言ってなかったのか?』とでも言いたげな表情を向ける。
すると、ウシュムさんはウシュムさんで
『あっ!やべっ……!』
とでも言いそうな表情を見せている。
それに対してガルグイユのじい様はため息を一つ溢すと、俺へと向き直って真剣な表情を作ってからこう言い放つ。
「……ジョン殿。お主には、既にウシュムガルを娶るだけの『覚悟』と『資格』が有ることは確認しておる。故に、この郷の仕来たりに従い、お主に『力』が有るかの確認をさせて貰う。
……具体的には、この郷で最強の存在である儂と戦い、生き残る事で証明とさせて頂こう。ウシュムガルと結ばれるのであれば、避けては通れぬ道故に、断ってはくれぬであろうのぅ?」
……え?なにそれ?構わないと言えば構わないが、一切聞いてないんだけど?
次回、じい様との戦闘回(予定)
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