第五十八話
神眼・氷海それは、かつて酒呑がクラウシアから逃げるときに使用した技の模倣である。だが、その効果は酒呑が使用した当時に比べてはるかに異なる。酒呑が使用した氷海は、空気中にある水素を強制的に冷却して放つ技である。その分、氷の硬度、冷たさにおいては永久凍土などには劣るものの簡易的なバリケードを作るに至った。
だが、蓮が放ったその技は大きく異なる。なぜなら、蓮の一族が受け継ぐ神業それはまさに十人十色。人によって大きく異なる能力に変化する。そして、蓮が得た能力それは『魔法を行使可能になる』という能力。そして特筆すべきは、その能力が普通の神業とは違い常時発動型であるという点であろう。
その能力によって、蓮は初めからそこには決して壊れない氷の波が存在していたと定めたのだ。
加えて、自らの覚悟を決めた影響か蓮にはもう一つの『神業』が付与されていた。
(凄い!まさかここまで規模が大きくなるだなんて・・・母さんたちがいってた言葉の意味が、少し理解できたかもしれない)
蓮は、氷の波に包まれた男を見る。『神業解放』『ピキッ』その刹那氷の波にひび割れが広がり氷の波が黒炎で包まれ中から男が息切れをしながら出てきた。
「あー死ぬかと思った。」
「は?」
(何で生きているの?確かに私は魔法を使ったはず!なのになんで?)
「ああ安心しときな。手出しするつもりはもうないから。」
「はい?」
「改めて自己紹介といこうか。俺の名前は百目鬼。まあお前の先祖みたいなモンだと思ってもらえれば幸いだ。」
「はい?」
彼がいった言葉は、蓮にとって大きな衝撃を与えるものだった。
「嘘、実在していたの?御伽噺だと思っていたのに」
「カカ!お伽話か、そりゃあいいや!しっかし現代は随分と変わっちまったんだな。俺たちがオーディンに敗北してしまったからか、お前ら子孫には迷惑かけちまったしな。」
「そういったものは心底どうでもいいから、あなたの目的は何なの?何をするためにこの場に現れたの?」
その言葉を聞いた百目鬼は、まるで悔やむかのような表情で言う。
「強いて言うのならば、お前を強くするためだな。お前は正直いって、赤月酒呑あいつについていけるほど強くはない。このままだと、お前があいつを殺す要因になっちまう。子孫にはそんなこと味わってほしくないんだよ。それに、お前あいつ信頼してんだろ?だったら強くなってやれ。あいつみたいなタイプは正直いって、他の人間を置いてっちまうやつだからな。それじゃあ、受け取れ。」
そう言うと、百目鬼のての上に黄金の文字が出現した。
「それは?」
「俺が考えた死者蘇生術以外の魔法が記された、『万能の書』だ。受け取れ。」
そう言うや否や、百目鬼の手のひらにあった黄金の文字が私の身体の中に入っていった。
「これで、俺の全ての魔法の知識がお前に受け継がれた。さあ、それを生かすも殺すもお前次第だ。自由に使いこなして見せるといい。」
「おい!あんたなんで、光の粒子になってんだよ!?」
「俺は、『万能の書』の権能の影響で、ここに魂の状態で来れていたからな。それを渡してしまうとそりゃあ消滅するさ。」
「本当に良かったのか?」
「あたりまえだろ?今は今を生きるお前たちのものだ。最初から俺は、お前の体を乗っ取ろうと思ってはなかったからな。お前に覚悟を決めさせるそれさえできれば、『万能の書』渡してとっとと消えるつもりだったのさ。だから、
そんな悲しそうな顔をするな。ようやくだ。ああようやくあいつらに追いつくことができる。あばよ。汝のこれからの未来に幸があらんことを。」
そう言うと、百目鬼は消滅していった。
ちなみに、百目鬼は酒呑の先祖と交友関係がありました。
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