第五十七話
酒呑が、枢機卿と坑道の外で戦っているころ坑道の中にいたユウと蓮は眠っていた。
いや、正確に言うのならば目覚めに入っていたという方が正しいのだろう。
「ここはどこだ?」
俺が、目を覚ました瞬間俺の目の前にはアカシアの木に囲われた焚き火とその焚き火を挟むように置かれた丸太に座り込むカラスのマスクを被った奴がいた。
「初めましてというべきか。過去の蓮よ。」
「は?」
「ふむ、衝撃を受けるのも無理はないというべきか?まあ確かに、私も少々賭けのようなものだったからな。さて、まあここはお前の心象風景のようなものだ。自らを壁で偽り、灯りの目の前で言葉という薪を燃やし続けているまさに今のお前らしい心象風景だ。」
なぜだろうか、こいつの言葉からはひどく苛立ちが感じられた。そして、悲しみと憎悪も。
「お前は何をしにここに来たんだ?」
「別に。特に何もしに来たわけではない。強いてあげるというのならば、貴様の体を奪うためにと言ったところか。」
「どうやって奪うつもりだ?」
「お前を吸収する。そして私とお前が一つになるのだ。そうすれば、私のあの目的も今度こそ完遂することができる。故に、その体を渡してもらおう。もとより、貴様に生きる意味や気力なんてものは存在しないだろう?」
その言葉を聞いて、俺はどんな顔をしていたのだろうか。
(そうだ、俺は確かに嘘をつき続けている。いつも、いつも。あまつさえ酒店にさえも嘘をつき続けている。そんな俺に、生きる意味なんてものがあるのだろうか。そんな俺が生きる理由なんてものがあるのだろうか。何もありはしない。それならば、どんな目的なのか知ったこっちゃないが目的のあるやつのために渡した方が世のためになるのではないか?)
『私たちはずっとずっと・・・・』
『人は理由があるから生きるんじゃない。生きるからこそ、理由が生まれるんだ。何かを成し遂げるのでもいい。何かを作るのでもいい。何かを守るのもいい。何かを愛するのもまたいい。だけど、だけど決して自ら自分に価値がない。理由がないと断じるのだけはやめてもらおう。それは、君の親に対する侮辱に他ならないよ』
俺が自問自答を繰り返すうちに、思い出したのは母さんたちからの最後の言葉と酒呑と初めてあった時の夜に言われた言葉だった。
「ああ、そうだな。そうだよな・・・」
「覚悟は決まったか?ならば、早くその体を渡してもらおうか。」
「俺は、いや私は!いつも誰かに嘘をついてばかりだっただからこそ、この言葉にだけは正直でなくてはいけないんだ!体を渡せと言ったな。それなら答えをくれてやる。答えは断るだ。俺は、私に誓う!『自らの意思で生き続けること』を!」
その言葉を聞いた男は、ため息を吐きながら言った。
「そうか。それがお前が選んだ選択か、ならばそれを尊重し武力で持って奪って見せよう!我は簒奪者!この名にかけて私はお前を殺す!」
「そうか。だったら私も自らに正直になろう。自らの誇りをかけて、勝つ覚悟を決めよう。
私の名前は蓮!いかなる場合でも赤月酒呑の、力になる!」
その瞬間、簒奪者は私の首めがけて大鎌を持って突撃してきた。だが、それは愚かというほかない。
私は思い出す、かつて父や母から教えられた古の『制約魔法』を用いた後に初めて使えるようになる神の如き幻術や魔術を自由自在に支えた怪物がいたことを。そして、私がその血を最も濃く受け継いでいることを私は忘れない。そして、私が解放するその業は
『神業系譜発動・神眼『百目鬼』
その言葉を言いた瞬間、私の心象領域は大きく変化した。夜だった空は、朝へとそして焚き火などが置かれていた地面はまっさらな海へと変化した。
「ありえない!それを使えるはずがない!制約魔法は、他社との契約時のみ使える!それなのに、自らに使うことができるはずがない!そして、お前は変化を恐れている!そんなお前に使うことなんて、覚悟なんてできないだろうが!」
どうやら男は驚いているようだ。
(ああ、そうだな。本来ならば使えるはずがない術だった。だけど私は変わったんだ。私は過去を振り返らない。立ち止まらない。酒呑のため、母さんたちに誇れるために力を使う!)
「神眼・烈火」
その瞬間、男の体が大きく燃え上がった。
「クソ!いくらお前のホームグラウンドだといえ、いくら何でもこれはおかしすぎる!何でそんなに能力を手にしたばかりの段階で使いこなすことができる!?意味がわからない。」
「さっきも言ったはずだ。私は赤月酒呑の力になると。お前を放っておけば、酒呑は確実に苦労する。だからここで必ず倒す。神眼」
それは、酒呑が以前使った技の模倣であり私にとって最も印象深いもの。
「氷海」
その時、巨大な氷でできた津波が心象領域を覆い尽くした。
はい、蓮は少女でした!(もう少し男とか増やした方がいいかな?)
まあ、制約魔法はルールを絶対遵守させるどっかのギアスみたいな能力です。ちなみに、心眼はいろんなことができます(千里眼とかパイロキネシスじみたこととか・・・)
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