第五十五話
「あー疲れた!本当に頭おかしいとしか言いようがないよ!これだから教団の輩と戦うのは嫌だったんだ!」
(しっかしまあ、なんともまあ面倒な頼みをしてくれたもんだよクラウシアさんも。)
僕は弾丸に撃ち抜かれた枢機卿を見ながら、先程の話を思い出す。
「なるほど、それはお互いにありがたいですね。」
「ああ、そうだろな。」
そう言い終えると、彼女は剣を地面に突き刺し僕に頭を下げた。
「は?いったいどう言ったつもりですか?敵の目の前で、剣を置きあまつさえ頭を下げるだなんて。正直言って正気の沙汰とは思えないんですが?」
「そうだな。私でも自分が馬鹿みたいなことをしているという自覚はある。だからこそ、こうして頭を下げて頼み込んでいるのだ。」
「そもそもの話、僕があなたの話を聞くとでも?僕としてはあなたをいつでも殺すことができる状況を見逃すほど人ができているわけじゃない。いくら何でも、買い被り過ぎだと思いますがね。」
僕は呆れながらにいった。だが、彼女は頭を下げながら反論してきた。
「いいや、君は決して私を殺さない。なぜなら君は必ず、戦士に対しては敬意を払う。そういう目をしている。そして、君の性格は正直言って馬鹿だ。」
「うわ、なんか急にディスられたんだけど・・・」
「まあいい意味の話だ。君は、半魔の少女を助けた。それはこの世界で数少ない馬鹿しかできないことだからだ。」
「その口ぶりだと、なんか他にもいそうですね。まあ自分でも自分が馬鹿なことしているって自覚はあるにはありますが。まあいいです。とっとと本題に入って欲しいんですがね。」
「そうだな。確かにそうした方がいいだろう。」
そういうと、彼女は深呼吸をし言う。
「私の主人である、アリス様を助けてくれ。」
「なるほど、意味がわからないんですがどう言うことですか?そもそもの話、半魔の少女を殺そうとするような輩を僕が助けるとでも?」
「あのアリス様は偽物だ。いや、正確に言うのならば乗っ取られているといえばいいだろう。本来のアリス様は、決して半魔であろうと傷つけることはせずに保護をなされる。私がそうだったようにな。」
その言葉に僕は衝撃を受ける。なぜなら、教団のものは神が全てそれはプロテスタントであろうとカトリックであろうと変わることはないからだ。そして半妖の人間は必ず殺すということもまたどちらも変わらない。
(道理で、『平安宴歌』においてアリスという聖女が登場しなかったわけだ。多分消されたんだろうな。)
そう僕が知っている『平安宴歌』の世界には、アリスという聖女は登場していなかった。おそらくだが、邪魔に思われて消されたのだろう。
「なるほど。それに関しては理解しましたが・・・・僕がそれを聞いて助けるとなぜ思うんですか?」
「言っただろう。君は極度のバカだと。そしてそのバカは大抵、他人が苦しんでいると必ず助けてしまうような極度の善人でもあると私の経験則だ。」
彼女は遠い目をしていった。どうやらアリスに相当苦労させられてきているようだ。
「はー」
僕はため息をつきながら言う。
「しょうがないです。と言うか僕は善人とかとは、最も離れた位置にいるとおもうんですけどね。本当に面倒だ。
だがいいでしょう。助けましょう。やってやりますよ。ほんじゃまあ、とりあえずこれ持っといてくれれば。僕が雷で合図送るんで、そこにむかって撃ってくれればある程度僕の能力が込められた弾丸なので制御できますよ。」
「待て、それではアリス様に傷がつくのではないのか?」
「いやそこら辺は大丈夫ですよ。一応、それに込めたのは精神の力ですから。」
そう言って僕は白龍を渡す。
「精神の力?どう言うことだ。」
「まあ端的に言うのなら、魂知覚して切り裂いたり燃やしたりできる能力みたいなもんですね。あと怒りとかによって火力が上がるとかそこら辺です。あと罪人とかだともっと火力強くなりますよ。まあ先程の『聖堂騎士団』を焼いた炎を魂とか精神とかを焼き尽くす形式にした形です。」
「凄まじいな・・・というかそれは君が持っていたほうがいいのではないか?」
「僕が持っていたら、確実に警戒されますから生物は基本意識外の攻撃が一番効くんですよ。まあとりあえず、今回は追い払うだけにしておきます。何するかわかったものじゃないんで。それでは終わった後で落ち合いましょう。」
「終わったか。」
「ええ終わりましたよ。お疲れ様です。クラウシアさん。」
「正直言って、お前が千本の短剣をアリス様の周囲に浮かばせた時はどうなることかと思ったぞ・・」
「流石に約束は守りますよ。ところで、どうしてそんなに黙りこくってるんだ?まだ数分程度は、その体に居られるはずだがな枢機卿。」
僕は、地面に倒れ伏した枢機卿を見る。
「ハハハハハ!愚か。実に愚かだ!クラウシア!貴様が裏切ることは少々予想外だったが!これでプロテスタントの権力も削ぐことができた!感謝するぞ!」
「こいつは何ともまあ・・・愚者という言葉が似合うものは、他にいないでしょうね・・」
「黙れ異端者!一つ聞いておこうクラウシア!なぜ貴様は、私が乗り移っていることがわかった?」
そういうと、クラウシアは冷たい目で枢機卿を見つめながら言った。
「簡単なことだ。アリス様はリコリスのことを、雑草などと思わない。あのお方はかつてこういった。
『リコリスとは、この国では『彼岸花』と言うらしいわ。この国では彼岸というのは、先人たちに感謝を伝える季節のことなの。だから私はリコリスのことをかつての先人たちを祀るとても美しくそして人の願いが籠った花だと考えるわ。だから、私はこの『日本』という国が好き。だから私は、この『リコリス』という花が大好きなの。』と仰ったのだ。だからこそ、貴様は偽物だ。」
その言葉を聞いた枢機卿は、狂ったように笑った。
「ハハハハハハハハハ!そうか、あの時点で貴様は私にきずいていたのか。そうか。以後気をつけるとするよ。それじゃあ、死ぬといい。」
すると枢機卿は、アリスの掌にロザリアを打ちつけた。その瞬間、大気が大きく振動する。
「貴様!アリス様の体に、何をした!」
「別に何もしていない。ただ、この女の体に宿っていた凶悪なモノの封印を解いただけだ。しかしまあ、驚いたぞ。まさか、聖女の体の中に竜が封印されていたのだからな!もうすぐだ!もうすぐ目覚めるぞ!かつての竜種の生き残り!ジャバウォックが!」
「今すぐアリスを連れて走れ!」
その瞬間、空間がひび割れその奥からふたつの頭を持った何とも形容し難い竜が姿を表した。
(おいおい、いくら何でもこんなのあり得ないだろうが!よりにもよって、ジャバウォックだなんて最悪もいいところだ!)
本来、竜種などの幻想種例えるのならば巨人などがそれに当てはまるがそれらには基本的に弱点が存在している。そしてその弱点はそれぞれ特殊だ。ファフニールならばグラム。ワイバーンなどならば逆鱗などだが・・・ジャバウォックの場合はそれが存在していない。なぜなら、ジャバウォックを殺す方法は作品によって多種多様。そしてその正体すらも謎に包まれている。例えるのならばジャバウォックは竜種であって竜種にあらず。それによって僕の
『竜殺剣』すらも効果が薄い。
(何だってこんなもの作り出すかなあ本当に!)
その瞬間、巨大な竜の方向で大気が大きく揺れた。
『主人!これやばいぞ明らかに!』
(見りゃわかるよ!明らかに勝てないし!)
クラウシアたちが、坑道の奥に行ったことを確認し僕はアゴニーを構えた。その時、ジャバウォックは空へと羽ばたき空中で妖力を収束させ始める。
「ウッソだろおい!いくら何でも半径十キロメートルが吹っ飛ぶぞあんなもんぶっ放したら!?しょうがない!アゴニー三又のやりに変形しろ!」
『わ、わかった!けどどうするんだいくら我でも現時点であれはきれないぞ!あの氷天六花とかいう技でもまず無理だ!』
「問題ない!いざとなった時用につけておいて助かったぜ!『白龍・拘束解除形態』」
その瞬間、白竜はアゴニーを銃口につけた巨大な大砲へと変形した。
『おいおいおい!まさかこれで我をあれにぶつけるなんて言わないよな!?いくら我でも痛いんだぞ!』
「そのまさかだ!文句は言うな!これが最善手だ!」
そして僕は、白龍・拘束解除形態をジャバウォックに向け詠唱を始める。
『天を捧ぐは竜か!神か!化け物か!妖か!否!断じて否である。この矢は、かつて人々の行く先を示した栄光の灯火なれど!ここに照らすはは人の命を守るため!今こそ原初の海に帰るといい!妖力制限完全解放!超空間過剰冷却発動!大帝の刃を今ここに!『天光・聖火の灯火』』
その瞬間周囲を光が埋め尽くした。
(ははは、無傷とはまあ。最悪もいいところだな。何とか相殺できたが、いくら僕でもあれ殺すのは無理だなぁ。すみません母さん。死なないと言うことは少しばかり、無理っぽいですね。)
次の瞬間、ジャバウォックが地面に落下した。
「は?」
それを目に焼き付けた瞬間、僕は意識を手放した。
はい筆者です。ちょっと多分わからないだろうから、説明しときます。
妖力制限完全解放はまあ、酒呑のまだ完成しきっていない肉体には少々いやかなり妖力はキャパオーバーだったんですよね。だからまあその状態で使いまくったら、血管破裂しちまうんで封印している感じですね。
2つ目の超空間過剰冷却は、読んで字の如く空間をめちゃくちゃ冷やして攻撃が到達するまでの時間がすごく短縮させるよな空間を凍らせることができる酒呑だからこそできるイカれ技です。
ちなみに、余談ですが現在の立烏帽子は普通にジャバウォック殺せます。あの子はあるいみ酒呑よりも天才なんで。それではこの作品が面白いと思ったのならば、感想と評価などもよろしくお願いします。




