第五十四話
(正直、当たってほしくない予想が当たってしまったな。まさか、『移魂のクリスタル』を使用するとは予想外だった。これも、僕がアレを殺したことに関係しているのか?)
『移魂のクリスタル』それは、枢機卿などのような一部の人間が入ることができる教団にある『宝物殿』に三個ほど存在すると言われる秘宝。
(それほどまでに、プロテスタントの力を削いでおきたかったのか?いや考察は必要ないな。)
「僕には、鎮魂の方法なんてものはわからない。だからこそ今ここで聞いておくぞ枢機卿。貴様、一体何人殺した!」
僕が現在使用している『矛盾剣・復讐の刃をいざここに』は、精神を司る。だからこそこの男から見えるのは数人程度では到底収まりきらないほどの暗く辛い悲しみ。
「獣をいくら殺したのか、狩人が覚えているわけがないでしょう?」
「いいや、お前は狩人じゃない。彼らは自然を、獲物を尊重している。そして、自らが為すことに対しての責任感を持っているだが、だが!お前は何も感じてはいない!お前が感じているのは喜びだ!もういい。お前みたいな奴に聞くのは間違っている。だから、全身全霊を持って僕はお前を切り捨てる!」
「いいや、違うさ。私だって責任感を持って動いているさ。あいつら半妖と半魔を絶滅させなくてはいけないという責任感をな!そして、如何やって殺すつもりだ?私を傷つけるということは、この体の持ち主を傷つけるも同じ。さあ!やれるものならばやってみるがいい!」
その言葉を聞き、僕は腹の底から息を吐き出す。
「お前は少し勘違いをしているよ枢機卿。僕は、決して善人なんかじゃない。むしろどちらかというのならば悪人に入るのだろうね。なにせたくさんの盗賊を殺しているから。だけど、僕は知っている。たくさんの人々がいることを。たくさんの人々がいて、その人にはその人の正義があることを。だからこそ、僕は決して見捨てるわけにはいかないんだよ。背後にいるであろう、幼い少女を殺そうなんて許せるはずが無いのだから。さあ、枢機卿。戦闘を始めようじゃないか」
そう言い終えるや否や、枢機卿は手をあげ巨大な岩を浮遊させた。
「詭弁だな。あれら半魔は神に見捨てられた愚かな獣にすぎない。それを守る意味もありはしない。愚かなり一人の男よ。貴様が為せることはただ一つ。神に許しを乞いながら、命を落とすことだけだ!」
次の瞬間、枢機卿は手を振り下ろし巨大な岩を僕へ向けて投げた。
(これはおそらく重力だそして、先ほど親方さんを壁にぶつけたのは斥力と見ていいだろう。厄介だな。一応、再度使用するのに時間が必要なのだろうが・・・それが何秒なのかがわからなくては仕込みが無駄になってしまう。だが、できる限り傷つけたく無いんだよなあ元に戻せる可能性もあるにはあるし。)
「随分と、荒いやり方だな!質量攻撃とはどこの脳筋だ?『氷天六花・合弁花『白天花』」
『パキィィン』
僕が氷天六花『白天花』によって凍らされた、空間に触れた岩が内部まで凍りついていく。
(いくら僕が無限に近い妖力を持っているとは言っても、相手に傷つけられないんじゃあかなり難しい。)
「これでもくらっときな」
そういうと僕は、空気中に存在する水素を凍らせたことによって生成した短刀を投げつける。
「無駄だ。」
そういうと枢機卿は僕が投げつけた短刀を跳ね返す。
「さいですか。それじゃあ、百本あったら足りるかな?」
「正気か貴様!?」
「正気にきまってんでしょうが!さあ、氷によって作られ雷を纏った短刀百連発だ!大人しく止まっておけ!」
そう言い終えいると、僕は枢機卿の周囲に短刀を千本ほど生成しその全てに雷をまとわせる。
(誰が馬鹿正直に百本作ると思った。千本くらい食らっておけ!」
「クソッタレが!『聖別のロザリオ』発動!能力指定、雷無効化起動しやがれ!」
その瞬間、僕が枢機卿の周囲に浮かばせておいた短刀たちが纏っていた雷が消失した。
(指定範囲内の能力無効化とみていいな。そして能力が有効化されるのは、おそらくだが、30cmほどとみていい。その証拠に、奥の部分の短刀はいまだに雷を纏っている。少し予想と違う形だが、まあいいだろう。」
「いけ!」
僕がそう言い終えると、枢機卿の周囲に浮かんでいた千本の短剣は枢機卿に向かって直進した。
「化け物が!」
だが、流石に枢機卿というべきか短剣が直進し始めるとその直後枢機卿は再度能力を発動させ僕のナイフを跳ね返し始めた。
(ここまでは、想定内だが問題はまだあるだろ・・マジかよ・・)
能力の発動時間が切れたのか、枢機卿に向かって直進していた短剣は折れ曲がった。
(周囲に重力を纏わせれるのかなら、なんで使わなかった?・・・そりゃそうか僕でもやろうと思えばできるが、その代わりと言ってはなんだが制御間違えたら最悪の場合超簡易的な重力場ができて自分も潰れちゃうもんな・・)
だが、それを易々と成功させているこ
とからも枢機卿の実力の高さが窺い知れる。だが、だからこそ
(あの仕込みが一番効くんだよ!)
『パチン』僕は指を鳴らした。
「なんだ?ただ指を鳴らしただけかだったら死ぬとい『ゴロロロロロ!』は?」
その瞬間枢機卿の足元に落ちていた、短剣に向かって雷が降り注ぐ。
『バチィィ』 『バチィィ』
「ふん、愚かだなたとえ強力な攻撃であろうとも当たらなくては意味がない!」
「ああ、そうだな。僕はお前に決して当てないようにしていた。なにせ、真打は別だからな。」
「何!?」
僕がそう言い終えると、枢機卿を一つの青白い弾丸が貫いた。
「言っただろ?僕はどちらかというと、悪人の部類だと。」




