第三十八話
(あの日も、たくさんの狐がいた。あの日もたくさんの雪があった。一体どれほどこの異能を恨んだだろう。一体どれほどこの異能を嫌っただろう。常に、常に私のそばにあってくれた。だからこそ、こいつは必ず殺さなくてはいけない!私が、私であるために。誇りを、取り戻すために。)
今美波の中にある思いそれは、今まで間接的に殺してきた兄妹たちへの罪悪感。だが、その思いは人一人が抱えるには、重すぎる。彼女は知らず知らずの内に自らが死んでその罪悪感から解放されたいと言う、一つの思いが発生していた。
青玉家の忌々しき掟の一つに、5歳となったものは必ず真冬の山に放置されそこで一週間を過ごす。その掟によって、美波が見捨てるしかなかったものたちの人数およそ20と5それほどまでの縁者たちをただただ殺されるのを見ているだけしかできなかった美波の悲しみは、怒りは恨みは一体どれほどのものであろうか。それだけは、決して計り知れるようなものではない。
「クソッタレが!十分だ!十分でお前を拘束して!借体形生の儀を完成させてやる!『雷狐!』」
白狐が美波に向かって雷でできた狐を放つだが、
「『薄氷』」
その瞬間、雷でできた狐は氷に包まれた。
「フゥ」
「まさか、いやそんなばかな!ありえない!」
美波が狐に向かって息をかける。その時、狐の表面に多くのひび割れが出現し
『パリィン』そんな音を立て、バラバラになる。
(くそ、最悪だ!妾が獲得している異能はこれ以外だと全て水系統などの能力!それを今この場で使おうものならば妾が死ぬことは明白!だが、このままだと死ぬな。全くもって最悪じゃ。まさか、美波如きにこの手を使うことになろうとは。)
その瞬間、白狐は懐の中から一つのロザリオを取り出して天に掲げた。その瞬間、鐘の音が鳴り響く。
「本来ならば、これは使うつもりのないものだったのだけれど。驚いたわよ美波まさか命を燃やしているとは言え妾に打ち勝てるほどになるなんてね。だが!これで終わりよ!
『あなたがわたしの右手に見た七つの星と、七つの金の燭台との奥義は、こうである。すなわち、七つの星は七つの教会の御使であり、七つの燭台は七つの教会である。』
『神霊召喚!』『能天使!』」
その瞬間、2枚の翼で自らを包んだ一人の鎧を着込んだ生物と形容出来るのかすらもわからない神に使えるものが今この場に訪れた。
「あははは!残念だったわね!天使には法則なんてものは通用しない!さあ、これでチェックメイトよ!とっと終わらせてしまいなさい!」
(嘘でしょ!?このババアいくらなんでもおかしすぎる!まさか天使召喚の媒介すらも教会との取引で手に入れたというの!?頭がいかれているとしか言いようがないわ!いや、それよりもまず防御を・・)
その時、能天使が自らの腰に携えた剣を抜き美波の方へ切先を向けた。そして次の瞬間、
『ジュウー』
美波の方を、光線が貫通した。
「クソッタレが!」
だが、美波も負けてはいない反撃を試みようとしたその瞬間、
「悪いが、部外者は大人しく出ていってくれ。」
仮面を被った一人の男が、能天使の頭を掴み空間外へと放り投げた。
はい、二話ぶりに酒呑が登場しました。まあ少しカッコつけすぎたかな?って思わなくもないですが、まあいいでしょう。
この作品が面白いと思ったのならば、感想と評価などもよろしくお願いします。




