第三十七話
「ほれ喰ろうてくれるわ『稲荷神』」
その瞬間、白狐の影から雷で形成された巨大な狐が白狐の頭上にあった天より落つる氷花の星を飲み込む。そして、その牙は美波へと向かわんとした。だが、依然としてこの場は美波の『固有空間』であることに変わりはない。
「年増が!『氷花の針』」
そして『稲荷神』に『固有空間』内であることによって威力が増幅された無数の針が突き刺さらんとした。
だが、その瞬間『稲荷神』を通り抜けた。
「残念!幻影よ。」
そう言い終えるや否や、美波の体に雷でできた牙が突き刺さっていた。
「っ〜」
声にもならないような叫び声を上げながら、美波は依然として勝利を諦めていなかった。
「何で、お前は永遠を求め続ける!」
「あら、時間稼ぎかしら?随分と愚かね。私がそんなことに容赦をするような人間だと本当に思っているの?だけど、そうねぇどうせ私のものとなるのだからせめて教えてあげるのもまた一興かしらね。いいわ教えてあげる。私が永遠を求める理由はその方が面白いからよ。」
「ハ?今なんて言った?」
「あら聞こえなかったのかしら?いいわもう一度言ってあげる。その方が面白いからよ。なにせ永遠よ永遠。永遠の時間さえあれば好きなことなんてし放題!それほどまでに素晴らしい事なんて、他にあるかしら?いいえ断言してもいいわ。存在しないわ。」
「ふざけるな!そんな、そんなくだらないことで今まで沢山の人たちを殺して来たっていうの!?ありえない!ありえていいはずがない!」
その言葉に、美波は激しく怒った。当然だ。彼女にとって、この女に殺されて来たのは自らにとって尊敬すべき先人。だが、この女はそれには当てはまらない。本来美しくあるべきであった青玉家の掟を歪め愚かにも、自らの子孫を服のように扱ってきたその理由がこれでは彼女にとって許せるはずもなし。その瞬間、美波は自らの命すらも燃やし尽くしてこの女を止めることを決意する。
「異能超越出力『月読命』」
その言葉を言い終えた瞬間、美波の服装が氷でできた羽衣へと変化する。
『異能超越出力』その力は、単純明快である。自らの命を燃やし尽くし異能の力を完全に吐き出させる使い手によっては神すらも凌駕しかねない力。故にその力には圧倒的な代償があった。
異能超越出力を使い終えたものは例外なく死に至る。
それが故にこの力は使ってはならないものとして教会によって『禁忌指定』を食らっていた。
(ごめんなさい。みんなほんとうに。)
その禁忌を使いながらも、彼女の中にあったのは約束を守ることができなかった、自らへの不甲斐なさと罪悪感であった。




