第十四話
アゴニーを手に入れてから、一年が経過した。今年の4月に母さんは蠱毒をかけられる。その前に、『クダン』に出会って不動王生霊返しを習得しなくてはいけない。
(だが、今の僕で茨木童子ともし出会った場合勝てるだろうか?確かに、僕には幾つか奥の手と言って然るべきものがある。だが、あれを本当に使うとなると確実に僕の体はボロボロになってしまうだろう。それ程までにあの、《《能力反転》》という力は圧倒的なのだ)
『全く、主人は心配性だな。主人は少しは誇った方が良いぞ。かつて神すらも振るうことが出来なかった我の主人として認められているんだ。そのことを誇りこそすれ、恥と思う人間なんていないだろう?』
アゴニーが、不器用ながらも励ましの言葉をかけてくる。
「ああ、たしかにな。君がいるんだ、それだけで自信がつくよ。」
余談だが、これを言葉に発しているわけではない。アゴニーの能力の中には
『念話』という能力も存在しておりその能力を使用して会話しているのだ。
そうこうしていると、廊下の方から慌てる声が聞こえてきた。そして次の瞬間、
驚くべき言葉が自室に入ってきた原三郎から伝えられる。
「ぼっちゃま!大変です。朱音様が《《呪いにかかりました》》!今現在、大蛇様が一流の解呪師を探しておりますが、もしかしたら間に合わない可能性がございます!どうか、最後になられるかも知れませんので何卒側でお言葉を、
「必要ない」原三郎が最後まで言い切らないうちに、行動を開始する。
「原三郎、ぼくはこれより暫しの間家を離れる。父上に対しては《《未来視》》にあってくると伝えておいてくれ。では、頼んだぞ!」
そう言い、原三郎が言葉を発する前に窓へ向かいそこから飛び降りる。
「『能力解放』やまびこ」
やまびこ、山へ向かって叫ぶと音が帰ってくる現象を起こしている妖。音とは空気中を振動させることにより、届く。すなわちやまびこの能力とは、厳密に言えば音と大気の支配に他ならない。
だが通常の妖力では、大気などのような自然現象を操るのは至難の業。まだ、妖術の修行を受けていないぼくには出来るわけがない。だからこそ、このあまりある妖力を使用した。
そうして、ぼくは空気をクッションとして飛び降りた。
そして飛び降りた、直後足腰を妖力で強化し、走り抜ける。
(くそ、ぼくの怠慢が原因だ!この世界は僕のせいで少しばかり歴史が異なっているんだ。もしかしたら母さんが、原作よりも早くに呪いにかかる可能性があるということも考慮しておくべきだった。幸い、クダンが出現する場所は赤月家の邸宅の近くにある。急いで向かえば数日でたどり着けるはずだ!)
そうして、酒呑は全速力で走り続けた。その行動が、一人の鬼の興味を引くということを考えずに。
どうだったでしょうか?今回の話のテーマは急転直下といった形です。ちなみに、やまびこなどのような妖力量が少ない妖だと能力の詳細を見たり聞いたりするだけでコピーできるんですよね。まあ、玉藻前とかの有名どころは別だけども。(あと存在自体が特殊な地獄関係者は除く)




