四十五ノ罪 黑き悪魔VS皓き悪魔
sin僟隊のメンバーは自身の身体に宿る、D指数を限界まで引き上げる。
ザイガへの合体が可能な77%迄、達したことによって、それぞれが合体シークエンスへと移る。
「「「「「「七罪合体!!!!!!!」」」」」」」
バラバラだった七機の機体は、一つの全長77メートルに達する巨大な人型ロボットへと変貌した。
しかしそれは、ロボットというには、実に歪で、実に怪奇な容を成し、正に混沌と呼ぶに相応しい。
「合体してくれたのは良いが、今の君達を倒したのでは、意味がない。時間をあげよう。君達のsin僟、そして君達自身も回復する暇をあげるとしよう」
その言葉に、一同は呆然とする。
これから戦うであろう相手に回復する暇を与えるとは、この悪魔は一体何を考えているのか、傑達は、アンフェールの言葉を疑い、損傷を受けた状態のザイガで臨戦態勢をとる。
「己惚れるな!」
突然のアンフェールからの怒号に、傑達の脳裏に宿る疑心は一先ず払拭される。
声の感じからして、それは明らかに冗談や佞言で言った言葉ではないと理解したからである。
あれ程、明朗闊達に話していたアンフェールがこれ程までに怒りを表すことは初めての事であった。
しかし、彼はあくまでも悪魔。
自分達を騙すための演技である可能性も否定できない。
それでも彼等は、自分達に力を与え、共に戦ってきた心優しき博士の姿を捨てられずにいる。
「私の開発したこのブランク・ザイガは、天使を斃した君達のデータを基に作成している。しかし、時には失敗のリスクもあるわけだ。ならば、今ここで全力の君達と戦い、勝利してこそ、私のザイガは完璧に造り上げたことへの証明となりうるだろう!!」
亜久良が口を開く。
「三吉、サタスの回復を頼む」
「亜久良!」
「分かった!」
「三吉!」
傑は、二人のその行動を引き留めようとする。
もし、今ここで三吉の機体がサタスと自分を回復させた場合、どのようなリスクが現れるか、まだ確定していない。
回復能力はたった一回のみなのか、三吉に何か反動はあるのか。
そう言った心配が傑の頭に過ったのだ。
しかし、亜久良は傑に言葉を掛ける。
「貴様が私をリーダーとしたんだ。ならば、黙って言うことを聞け!それに……」
亜久良は言った。
「必ず、三吉には負担を掛けさせないよう、全力で指示を出す」
それは亜久良の決意であった。
傑から託されたsin僟隊のリーダーという役割。
それを、亜久良は今回のアンフェールとの対決でその実力があることを示そうとしていた。
‘‘三吉に負担を掛けさせないようにする’’
それはつまり、今回の戦いではザイガに《《一片の傷》》もつけることなく戦うという意味。
亜久良は、決めたのだ。
この先、天使と神・ゼウスを斃すのは、自分の力が必要であることを。
その為に、ここで躓くわけにはいかないと。
三吉は、アスロトの能力を使い、サタス及び傑の回復を図る。
その間、アンフェールは手出しすることなく此方を嬉々として見つめていた。
お互いが、向き合いどちらが先手を出すか睨み合いが続く。
司令塔となった亜久良は瞬時に全sin僟とザイガの担当部位を調べ上げ、能力を復習、弱点の把握始める。
開発者であるアンフェールの方がsin僟の知識は豊富である。
それに、これまでの戦闘を観測してきた観測者でもある。
ならば、パイロットの強み、弱み、sin僟の弱点もその萎れた頭部にインプットされている筈。
亜久良との知識量では圧倒的にアンフェールに軍配が上がる。
その、ハンディキャップの差を埋めるべく、亜久良は瞬時にsin僟のデータをその頭に叩き込んだ。
しかし、それでも恐らくはアンフェールの方が上であろう。
だが、アンフェールに近い頭脳を持つのは亜久良、唯一人。
戦闘スキルでは、傑に分があるだろうが、彼は、ザイガの中心部を担っており彼一人を頼るのは酷と言うモノ。
そもそも、彼が無理だと理解したから、自分がこの指示役《役割》を引き受けたのだ。
最初に動いたのは、アンフェールだった。
皓きザイガは、その恍惚に輝くボディを走らせ、臀部から皓き巨剣を引き抜く。
対するザイガも、相手が走り出したと同時に、咎の剣を持ち、アンフェールの攻撃に正面から待ち受ける。
剣と剣がぶつかり合い、大地に衝撃波が奔り、辺りに噴煙が巻き起こった。
互いの力は拮抗し、鍔迫り合いが続く。
火花が飛び散り、硬質な轟音が反響する。
橋姫の担当する右腕は、橋姫と傑のコントロールで素早くアンフェールの開発した新たなザイガの動きに対応し、互角の戦いを繰り広げる。
ここで、亜久良がある事実に気が付く。
アンフェールが皓きザイガの肩にずっと乗っている事であった。
「アイツ、操縦をしていないのか!?」
「フッフッフ」
アンフェールは不敵な笑みを浮かべる。
「ようやく気付いたか。このザイガは私が操縦しなくても戦えるようにプログラミングをしている。つまりは自動操縦が可能と言う事だ。この私が、操縦していないブランク・ザイガと同等の戦闘力では、この先、君達に勝ち目は一切ないぞ!!」
高らかに、アンフェールは笑う。
自分の作った最高の機体が、これまで天使共を蹂躙してきた悪魔の機体と同等に、それ以上に力を持っているという確信を得て、自身の能力の高さを自分で褒め称えた。
一方、黑きザイガに搭乗しているsin僟隊の面々には、絶望の予兆が走り抜ける。
天使五体と戦闘した疲労が蓄積され、全力を出し切れずにいる。
それに加え、目の前の敵は、また新たな力を隠し持っている。
既に、亜久良の頭脳で何とかなる域ではなくなっていた。
これは、sin僟隊全体の問題。
自分達の全力を、死に物狂いで出し、戦わなければ、負ける。
全員が、その事を理解する。
まだ出し切れていない力を、怒りを、欲望を、罪を、体を起こし、呼び覚ます。
白狐の担当する左腕が、ブランク・ザイガの剣を抑えようと掴もうとするが、それを皓き右腕が掴み、阻止をする。
黑き魔神と皓き魔神は左右対称。
ブランク・ザイガの右腕は白狐のグリモンと同等の能力を有していた。
互いが互いの能力を奪おうとする。
しかし、互いにその能力は反発しあい、只手四つで押し合った。
「頼む!白狐!耐えてくれ!」
「……当たり前だ!!機械如きに負けてたまるかよッ!」
左側のマニュピレーターがブランク・ザイガの右腕を押し返す。
全力を出し切ろうとするsin僟隊をアンフェールは不敵な笑みを浮かべて、高みの見物を決め込む。
その姿を見た傑は、全身に怒りのエネルギーを集め、全パーツへと意識を手中させた。
ザイガの全身へ、自分が持っている怒りのエネルギーを送り、ザイガの力を高め、アンフェールが開発した皓き悪魔の巨神を押し返した。
「ほう、まだ自分の中に怒りのエネルギーが残っていたか……」
押し返すザイガの姿にアンフェールは嬉々と笑む。
自分がこれまで手塩にかけて育ててきた我が子が成長した姿を嬉しく思う親の様に。
これまでの研究結果が満足いった成果を生み出したことを喜ぶ研究者の様に。
片手は互いの剣で鍔迫り合いが発生し、もう片方では互いのマニュピレーターが手四つで力比べを行なっている。
互いの拮抗した状態に、アンフェールはその嬉々とした口を変えず、口を開いた。
「語ってやろう。ザイガとは何か。神とは何か。sin僟とは何かを」
その言葉は、sin僟隊にとっては初めて聞くことになるこれまでの地球の歴史。
誰も知ることなかった、知る由も無かった悪魔が語る神の目的、そして、生物たちの正体、悪魔の正体であった。




