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sin僟・ザイガ  作者: HEiTO
第三章 地天激動大戰篇
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三十九ノ罪 地天激動大戰⑳ 鬼狼

 傑の呻き声で、事の原因であるはずの三人が目を覚ます。


「なんだよ。うるせ~な。また殴られてぇ……。!!」


 頭を掻きむしりながら、視線を落とすとそこには既に息を引き取った総司が映った。


「チっ!こいつ、死んだのか?面倒くせぇことしやがって」


 その言葉に、傑は血管が一気に開くのが分かった。

 全身の血管が全て頭にせりあがるような、そんな感覚。

 一年前、傑が少年院ここへと来るに至ってしまった時と同じ感覚。


 傑は自身では気づかない程に、この惨劇の現況である180を超える頑強な肉体の男を睨みつけていた。

 その視線に気づいた大川原は、傑を睨み返し、顔面に一発重たい一撃を決める。


 よろける傑を背後から双子の海が両腕を固定するように羽交い締めにし、大川原の前に差し出す。

 傑の前にまた強烈な一撃が繰り出されたとき、一瞬にして腕を引っ込ませ、下へとしゃがんだ。


 大川原の一撃は海の顔面に打ち込まれ、壁にぶつかり、呆気に取られている巨漢の両足を足払いで床に背を着かせた。

 仰向けになった大川原の顔面を殴ろうとする傑であったが、横やりが入る。


 双子のもう一人、陸であった。

 喧嘩慣れしていないのか、無暗に抱え込もうとしてくる陸に、傑はわざと捕まり、背中に強烈な肘打ちを決め込む。

 その衝撃は肺にまで届き、呼吸困難へと陥った。


 だが、その間に大川原は立て直し、傑にタックルを掛ける。

 その大きな巨体に逃げ場などなく、傑は真正面から受け、全身に強い衝撃をが走った。

 鉄で作られた檻にもその衝撃が走り、閉鎖された空間全体に轟音が鳴り響く。

 起床したばかりの他の少年たちは、傑と大川原の殺し合いにも似たその行動に沸き、好き勝手に声を上げる。


 倒れた傑の顔面を足底で踏み潰そうとするが、傑は先に相手の金的を狙い悶絶させた。

 その後、すぐに立ち上がり、自分の胸元の高さまで落ちている大川原の顔面を膝蹴りで決め込み、仰向けに倒れた巨漢の顔を更にその量の拳で殴り続ける。


 何度も何度も何度も何度も。


 やがて、法務教官が訪れ、傑は個室へと移動することとなった。

 また、大川原を含む三名もこれまでの所業の数々が暴かれたことにより、個室行きが決まった。


 この出来事以降、傑は己の身体の底に眠る力を認め、今のままの自分に別れを告げ、新しく生まれ変わることを誓った。


「俺はこのままじゃいけない。こんな力がある限り、誰かを傷つけてしまわないように。誰かを守り抜くためにこの力を使おう」


***


 現東京。


 迫りくる炎の竜巻の中、傑は目を覚ました。

 しかし、そこに居るのいつもの傑ではなく、悪魔に取りつかれた姿だった。

 歯を剥き出し、黒目は存在せず、全身に血管が浮き出す。

 体毛は逆立ち、その姿は正に狼男と呼ばざる負えないモノであった。


 両脇に落ちている鬼狼ノ棍棒を拾いミカエルが放った風の矢を弾き返し、周囲の竜巻もその勢いのまま、回転し掻き消す。


『……まだその力があったか。イヤ……貴様。悪魔か』


「フゥ……フゥ……フゥ……」


 上空に浮かぶ天使目掛けて、サタスは再度下半身に力を加え跳ぶ。

 10mはあろう巨体は獣の様に軽々しく空に浮き、両手に構える棍棒を天使に振り落とすが、ミカエルの神槍がそれを邪魔した。


「ウガァァァァァァ……!!!」


 人外なる力を得たサタスであったが、その攻撃はミカエルには届くことなく、地面へと降り立つ。

 その上から、今度はミカエルがサタス目掛けその神槍を向ける。


熾天使ノ一突キ(ミハイル・スラスト)


 それは、以前繰り出した技と似て非なるものであった。

 ミカエルを包むその閃光は、地面へと落ちる。

 音速を超えるその速さに耳を劈くような音が流れ、サタスに激突した。


 辺り一面の炎を吹き飛ばし、瓦礫は砕け、コンクリートは砂に変化する。

 余りの衝撃に悪魔が造った世の理に反した強度の棍棒は砕け、鬼狼ノ爪も辛うじてその形を保持しているに過ぎない程に限界を迎えようとしていた。


 砕けかけた右爪を地面に食い込ませ、砂埃を起こし下から上へ天使の身体を傷つけようとするが、あっという間に避けられる。

 続いて、左爪を空中から振り下ろすがそれも少し掠り傷を与えるに過ぎなかった。

 だが、そんな事をものともせずに、サタスは攻撃を続ける。


 地面を抉り、空を裂きその分裂した攻撃が同時に天使の身体を挟み込む。


 ‘‘鬼狼ノ爪牙(ウルフ・ファング)’’


 二つの爪が嚙み合わさり、狼の牙が天使の身体に食い込んだ。

 

 しかし、暫くして食い込んだ筈の首肯の爪は崩れ落ちてしまう。

 天使の攻撃にさらされても尚、何とか形を保っていたその爪は、最後の最後の力尽き、その姿は砂になって消えてしまった。


 そんな状況に陥ってしまったサタスが次にとった行動は、狼の尻尾を模した剣、鬼狼ノ剣(ウルフ・ソード)であった。

 間合いを取り、隙を見て素早くその間を埋めては鋭利な刃物で天使を斬りつける。

 だが、そんな攻撃は、ミカエルの表面を傷つけるまでには至らない。

 

 サタスは悲痛な叫びをあげながら、その身体を動かす。

 腕の関節が、足の関節が徐々に軋み始める。

 

 他の戦闘を終えたメンバー達が傑とサタスの元へ訪れるが、それをミカエルが排除しようと白い光源を放つ。

 意識がないはずの傑は仲間の方を咄嗟に振り向き、仲間がその白い光に包まれるのを目撃してしまった。


 その時、傑は咆哮した。


 サタスの瞳は紅く光り、機体全体に赤黒い雷光が走る。

 

 刹那。

 

 サタスは、ミカエルの懐に潜り込み、隙のあったその胴体に剣を振りかざした。


 

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