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67 道中~サランヴィーネへ~

 門を通り過ぎて外に出て、サランヴィーネへと向かう街道を少し進んだところで、テトとリトがそれぞれの影から出てきた。

 だが瑠華るかはテトには乗らず、シンとサラにも歩くように促した。


 「歩いていくんですか?」

 「ああ、どうせ今日は野宿になるからね。例の魔物の、縄張りに入る前で休むことにする」

 「例の……この街道に出るという魔物のことですね?」

 「え?なんの話?」


 瑠華とシンの会話にサラが首を傾げていたので、シンが手短に説明をしている。それを聞きつつ、瑠華はちらりと後方を見て、左手の薬指で眼鏡を上げながらため息を吐いた。



 ああ……面倒くせぇなぁ………。



 今瑠華達は、横一列に並んで街道をゆっくり歩いている。

 例の魔物のせいで、街道には人っ子一人いなかった。普段は商人や冒険者達がよく利用している街道だけに、もの悲しい雰囲気である。

 そんな街道を、サラがきょろきょろと不安そうに見回していた。


 「そんな魔物が、この先にいるんだ。ちょっと怖いな………」

 「これからはこんなことばかりだよ。慣れないとね」

 「…………はい」


 瑠華が安心させるように頭を撫でてやれば、少し頬を染めてはにかんだようにサラは笑った。


 「ところで、サラは料理は出来るのかな?」

 「母の手伝いをしていたので、少しなら出来ます」

 「そう。じゃあ、魔法はなにが使える?」

 「私は地と水が使えます。あと、属性素質は低いですが、光魔法も扱えます。魔力はCの緑です」


 兄妹で魔法の素質が高いのか。

 戦闘では、基本的に二人共後衛だね。前衛は僕とテトで十分だろうけれど、万が一別行動になった時のことを考えると、シンに接近戦の(すべ)を教えておいたほうがいいだろうな。リトだけでは危ないというか、心許ないことだろうし。


 でも、戦闘において一番大切なことは、もっと単純で一番難しいことだけれど。これに関しては、要訓練だね。


 そして図らずも今、訓練にはぴったりな状況になっている。


 「………シン、サラ、今なにか感じないか?なんでもいい、違和感とか妙な気配とか」


 瑠華に言われたシンとサラは、二人してきょろきょろと辺りを見回したが、特になにも感じなかったようで困ったように瑠華を見た。


 「……例の魔物、ですか?」

 「残念。不正解。お前達も、これからは気配が読めるようにならないといけないよ。人間相手でも、魔物相手でも、有利に立つためには大事なことだから」

 「「はい」」


 力強く頷きながら返事をした二人に、瑠華は目深に被ったフードの下で薄く笑みを浮かべる。


 「実は、噴水広場からずっと、つけてくる気配があるんだよ。それも複数ね。コッシュトーの街を出たら襲ってくると思っていたんだけれど、ずっとついてくるだけなんだよね。もしかしたら、夜まで待つ気なのかもしれない」

 「成る程。それでテト達で行かなかったんですね」

 「なんの目的でしょうか?伯爵の部下とか?」

 「それは分からないけれど、相手の気配は知っているんだよね」


 なんか知ってるな~って思って記憶を探ったら、思い出したんだよね。つい数日前の出来事だし。


 「え?お知り合いなんですか?」

 「いいや、全く。でも一度会ったことがあるんだよ」


 瑠華はルッシャート王国に入ってからコッシュトーの街に行くまでに出逢った商人、ソロウと娘のスフィール、そして護衛の男達について話をした。

 後ろの気配は、その護衛達の気配だ。


 「へぇ、そんなことがあったんですね。でも、なんで後をつけてくるんでしょうか?」

 「さあねぁ………なんか最後まで随分睨んでいたし、悪意を持たれているとは思うけどね」

 「迷惑な話ですね」


 サラが嫌そうに顔をしかめて呟いた。シンは苦笑して、サラの頭を撫でて落ち着かせる。


 「というわけで、彼奴等はどうやらこのままついてくるみたいだから、気配を読む練習をしなさい。先ずは人間と自然の者、魔物の気配くらいは分かるようになること」

 「「はい、分かりました!」」


 同じ動きをするシンとサラを見て、二人は双子みたいな時があるな、と瑠華は面白そうに見つめる。

 その間にも、男達は付かず離れずで一定距離でついてくる。全くもって、修行には丁度いい相手であった。






 その後数時間歩き続け、空が大分茜色に染まってから休むことにした。林を背にマジックテントを置き、その側で調理の準備をする。時間もあるし人数もいるので、瑠華が料理を作ろうと思ったからだ。

 アイテムボックスに入っている料理は、基本的にダンジョン攻略中などの直ぐに食べられて動けるようにしたい時など用のものだ。

 今までは作るのがめんどく…………気が乗らなかったので食べていたけれど、作れる時は作らなければいけない。

 ということで、サラに大きな鍋に具材たっぷりのスープを作ってもらう横で、シンには魔物の捌き方を教えつつ、肉を焼いてもらうことにした。

 疲れた顔をして立っている二人に向かって、アイテムボックスから取り出した調理道具と、様々な食材を示しながら説明する。

 シンもサラも、ずっとうんうん唸りながら気配を感じようとしていたので、頭が少し痛むようだ。こめかみをもみもみしていた。


 「サラは、ここにある物を使ってスープを作ってね。味付けは君に任せよう」

 「……はい」

 「シンは僕が捌き方を教えるから、捌いたらひたすら焼いていって。焼けたらこの葉っぱの上に置くように」

 「………大きいですね」

 「古い森には、よくある植物の葉だよ」


 火から少し離れた場所に、二メル程の大きさの葉を置く。その葉に包んでアイテムボックスに入れておけば、いつでも食べられる。

 シンは興味深そうに、その葉を眺めていた。


 「さて、奴等はどうするのだろうねぇ………」


 瑠華は、未だにこちらを窺っているが動く気配がない男達がいる方向を見て呟いた。

 その表情は、心底嫌そうにしかめられていた。








読んで頂いてありがとうございました。

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