↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
36/98

24 変化

 そういえば、とサピセスの街で受けた依頼を思い出した。アイテムボックスから依頼書を取り出して確認する。



 ランクG リンカ草 十本 通常依頼 報酬 銅貨一枚 ポイント3

 リンカ草を十本納品して下さい。十本以上あった場合、十本毎に銅貨一枚、ポイント1ずつ上乗せします。

 この依頼は常時受け付けております。



 ランクG レッドホーンラビット 三体 通常依頼 報酬 銅貨三枚 ポイント5

 討伐証明の耳を三つお持ち帰り下さい。三つ以上あった場合、一つにつき銅貨一枚、ポイント1ずつ上乗せします。

 この依頼は常時受け付けております。



 ランクG エンリン花 五本 通常依頼 報酬 銅貨三枚 ポイント5

 エンリン花を五本納品して下さい。五本以上あった場合、三本毎に銅貨二枚、ポイント3ずつ上乗せします。

 この依頼は常時受け付けております。



 ランクF ファイアーファング 五体 通常依頼 報酬 銅貨三枚 ポイント10

 討伐証明の牙を五つお持ち帰り下さい。五つ以上あった場合、三つ毎に銅貨二枚、ポイント5ずつ上乗せします。

 この依頼は常時受け付けております。



 ランクX ヒカエルの鱗 一つ 緊急依頼 報酬 金貨五枚 ポイント1000

 ヒカエルの鱗を一枚納品して下さい。ヒカエルは生け捕りでも構いません。報酬は一人一つに限らせて頂きますが、一つ以上あった場合一つ毎に金貨五枚で買い取らせて頂きます。ポイントは付きません。

 この依頼は必要数に達した時点で終了になります。



 うん、我ながらなんか面倒くさそうな依頼を受けてしまったような気がしないでもない。


 リンカ草は一般的に売られている回復薬の原材料。そこかしこに生えていて誰でも簡単に採取できるので、ランクGである。世界中どの冒険者ギルドでも、常に通常依頼として出されているので、ランクGの冒険者のポイント集めとして役立っている。

 レッドホーンラビットは一角兎(ホーンラビット)の属性種。簡単に言うと火属性を持つ一角兎(ホーンラビット)で、狩り方も一緒となる。ファイアーファングと同じで、この辺りでよく見かける魔物である。

 エンリン花は、調合すると火傷に効く薬が出来る。火属性が多いこの地域では絶対に必要な薬草で、冒険者は当然として一般人も家に常備している。

 ファイアーファングは先に説明した通り。


 そしてランクXの依頼。

 ランクXとは特殊、緊急依頼のことである。内容は様々で受けられるランクも限られたりする。


 例えば貴族の依頼者が特殊な素材を欲したり、街の周辺で魔物の集落が発見され討伐の為の緊急依頼、依頼内容と報酬が釣り合っていない、所謂面倒な事情のある依頼など。


 内容によって、ランクもBランク以上とかAランクパーティーやクラン限定などだ。



 今回瑠華が受けたランクXの依頼は、ヒカエルの鱗を納品すること。

 ヒカエルとはランクDの魔物で、名前の通り火属性を持つ蛙。水辺のない草原に出没することもあるが、基本的にヴァルザ火山の手前に広がる沼地にいる。体長は二十セル程でレベルは総じて低く、普通なら下級冒険者が対処できる魔物だ。

 レベル的には。


 ヒカエルの厄介な所は身の危険を感じると、スキルの「火体」を使って体に炎を纏い突進してくることだ。

 ヒカエルが纏う炎は超高温で、当たれば鉄などの装備を溶かし皮膚が爛れる。

 しかも更に厄介なのが炎を纏った状態で死ぬと、体は触れられないほどの高温のままになる。

 では何故こんな厄介でしかない魔物がランクDなのか、それは弱点がはっきりしているからだ。

 火の魔物らしく、弱点は水属性。水魔法の中級一発で死ぬ。ちゃんと当たればだけど。

 動きは蛙にしては速い方だが、それなりに戦闘経験を積んだ冒険者なら捉えることの出来る程度のもので、突進も真っ直ぐのみだからちゃんと見てれば避けられる。

 スキル「火体」も個体差はあるが大体5~10分の効力なので、その間逃げ回りスキルが切れたと同時に攻撃する。


 傍目には情けない戦いに見えるかもしれないが、それが一番効率の良い倒し方。


 依頼書には生け捕りでも可とあるけれど、生け捕りなんかできるか‼、というのが冒険者達の声である。


 そして鱗というのは、ヒカエルの腹にある小さな鱗のこと。この鱗を防具を造る際の素材にすると、“火属性耐性”が付与される。


 ただしヒカエルの絶対数が低いため、乱獲は禁止されており、この依頼が出るのは、一年の中でヒカエルが繁殖期を迎えた後だけになる。



 ヒカエルの鱗の依頼は、限定依頼になるはずで緊急依頼にはならない。報酬も上がっている。確か繁殖期は終わっているはずだから、依頼が出ていること事態は不思議ではない。

 瑠華は、ダンジョンの影響でなにか問題でもあったのかと推察する。受付嬢の反応を見るに、その可能性は多いにある。



 ランクGが受けられるくらいだから、誰でもいいから取ってきて的な感じだろうか。なんというか無責任な気がするが、ギルドとしてもどうしようもないのかもしれない。

 この辺りの冒険者ならヒカエルの危険度は分かっている筈。それを踏まえて受けるのなら頼みたいってことか。

 それほどに、切羽詰まっているということなのだろう。おそらく。

 ヒカエルの生息域はヴァルザ火山の麓の辺り。本当なら通る必要のない場所だけれど、入り口から入れない可能性がある以上、どうせ通ることになるのだから見てみよう。


 瑠華が何故、この依頼を受けたのか。

 それは単純に、既にヒカエルの鱗を持っていたからである。ヒカエルの鱗だけではなく他の依頼品も。



 ズルいって言わないで欲しい。これも一つの依頼の達成の仕方だから。

 でもランクGが鱗を持っていったら、なんか言われそうではある。でもポイントに惹かれてしまったのだ。僕としては早くランクを上げたかったから。

 職業の(嘲笑)を消し去りたいんだ。どうしても。



 取り敢えずは何度か魔物と戦ったら、サピセスの街に戻ることにして、瑠華は魔物の討伐を続けることにした。







 草原を駆けて数回魔物と戦ってから、サピセスの街に戻る。門に着く前にテトに影に入ってもらい、門で兵士に通行証の確認をしてもらって門を潜る。

 冒険者ギルドで依頼完了の報告をしてもよかったが、どうせ明日また行くことになるから、とこのまま宿に向かって歩き出す。依頼には、完了期日はないものばかりだったのも幸いした。

 それに今行くと、依頼を終わらせた冒険者達がごった返している時間帯なので、瑠華は避けようと思ったのだ。


 食欲をそそる香りが漂う大通りを進むと、やはりフードの中のマリア達がタシタシと催促してくるが、今は我慢してほしい、と瑠華は宥めるようにフードに手を入れ順番に撫でていく。夕食は宿で取ると伝えてあるのだから、そちらで取るべきだろう。尤も、マリアとムツキなら此処で摘まみ食いしても、夕食はぺろりと食べてしまいそうではある。

 マリア達の催促のタシタシが、バシバシに変わってきた時に宿に着くことができた。既に夕方の鐘は鳴っているから、夕食は食べられるだろう。

 瑠華は宿に入って右側の食事処に向かい、宿の娘のアーシャだっけ?に声をかける。


 「今戻ったんだけど、夕食はもう食べられる?」

 「ああ、お客さんお帰りなさい!食事ね、今持っていくから適当に座ってて!」

 「大盛りにしてもらえるかな?」

 「大盛りね!追加料金を貰うことになるけど大丈夫だよ!」

 「じゃあ、それでよろしく」


 沢山並ぶテーブルの中で、空いていた部屋の一番隅の席に壁と向かい合うように座る。

 マリアとムツキがフードから出て膝の上に移動する。二人を撫でて癒されながら、瑠華は思考を巡らせる。



 やはり魔物の数とレベルが総じて上がっている。街の周辺はまだ影響は少ないみたいだけど、ヴァルザ火山に、ヤカサルの村に近づくにつれて上がってくる。

 明日も早朝から出て行こう。けれどギルドで魔物を売却したお金と依頼完了の報告をしなくちゃいけないから、一旦戻るようかな。

 でもテトなら、ヴァルザ火山まで数時間とかからないだろうし、ちょっと様子見に行っちゃおうかな。



 考えに耽っていると、アーシャが料理を持ってきてくれた。料理は本当に大盛りで、一人前の筈なのに三人前はありそうだった。アーシャに追加料金分を支払い、お礼をする。

 頂きますをして、瑠華が一人前の半分を食べる頃には、残り全てをマリアとムツキが食べ尽くしていた。



 もっと味わって食べなさい。



 瑠華はやれやれ、と眼鏡を上げつつ首を振り、マリア達をフードの中に入れて席を立つ。食事処を出る時に擦れ違ったアーシャに礼を言い、入り口で客の対応をしていた母親に鍵を貰って部屋への階段を上る。二階の一番手前の部屋に入ると、フードからマリア達が出てきてベッドで寛ぎだした。

 部屋の中は、やはり清潔に保たれていて綺麗だった。宿屋としては当たりになるだろう。母子の会話をスルーすれば。


 「テト、なにか食べる?」

 「いや、特には必要ない」


 瑠華が影から出てベッドに寝そべったテトに聞けば、そんな答えが返ってきた。既に毛布の中に入り、寝息をたて始めたマリア達に聞かせてやりたい言葉だった。


 「ちょっとお風呂に行ってくるから」

 「ああ」


 一階の奥にあったそれなりに広いお風呂に行くと、早い時間だからか二人程しかいなくて、まったりゆっくりな時間を過ごすことができた。

 十分に温まり、簡易な服に身を包み、部屋に帰って寝る準備をする。

 ベッドに行き、マリア達を起こさないように毛布に入り、眼鏡を外して夜の祈りを捧げてから瞼を閉じる。


 「おやすみ」


 小さく呟くと、寝惚けたままの小さな鳴き声が返ってきた。






読んで頂いてありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。