第7章 隠された宝物
次の日の朝早く、クンタは砂浜に穴を四つ掘った。海賊の三人と、昨日殺された奴隷を埋めるためだ。
「彼、アベベ。友達。一緒に、来た」
そう言うと、その遺体を穴に入れて、砂をかけた。その後、近くにあったサンゴ石の塊を一個だけ、墓標代わりに載せると、何やら彼らの言語で弔いの言葉をかけた。マルコも静かに目を閉じて、祈りをささげるのだった。
「もう、アベベ、自由になった。ワタシも、ワタシだけのもの」
次に海賊三人は、穴に埋めても、軽く眼を閉じて祈っただけで、墓標は立てなかった。それは、ここに埋めたことが、後から来た海賊にバレないようにするためだった。
「マルコさん、この島、出る、できるか?」
「マストが無い小舟じゃ、難しい。でもひょっとしたら、洞窟に何かあるかもしれない」
「洞窟?」
「海賊たちが、宝を隠しているらしい」
「どこにある?」
「大体の場所なら・・・」
マルコとクンタは海賊から拝借したブーツを履いて、斧を担ぎ、森へと入っていった。昨日来た岩場も、ブーツのおかげで、スイスイと進むことができた。
「この辺に、洞窟があるはずなんだ」
しかし、辺りを見渡しても、洞窟があるような岩山なんか見当たらなかった。マルコはこの場所はやはり、細身の海賊がサボっていただけで、洞窟は他の場所にあるんじゃないかと考えた。
「洞窟、ない、探すは大変、海賊の仲間、来る」
「うん。そうだな。あまりこの島に長くは居られない。今日中に島を出よう」
そう言って、岩から地面に下りようとしたところで、
「危ない!」
クンタがマルコの手を引っ張って止めた。マルコが下りようとした地面には、岩の穴がぽっかりと口を開けていたのだった。
「これだ! 洞窟は地面の中だったんだ!」
二人は顔を見合わせて笑みを浮かべた。
穴の中に下りていくと、梯子が掛けられており、やはり海賊たちが利用していたのは確かなようだ。そこはサンゴの石灰岩層に、雨水で浸食された洞穴になっていた。底に下り着くと、湧き水が溜まった池があり、二人は喉を潤すことができた。日の届きにくい場所には、ロウソクが立てられており、近くには火打石もあった。
「灯りを点けよう」
マルコはロウソクに火を点けた。するとその先には、木材で組まれたしっかりした小屋があるのが見えた。そして小屋の扉を開けて中を覗くと、そこには密輸品が溢れていたのだ。
「これは、サンタ・アナ号が運んでいた毛皮じゃないか」
海賊たちは商船を襲った後、略奪品をこの島に一時的に保管しているようだ。
「なら、織物もあるかもしれない」
マルコはそれがあれば、小舟に帆を張ることができると考えたのだ。
「マルコさん、これ」
クンタはすぐに織物を見つけた。それは大きさが二十平方メートルもある立派な布だった。
「こんな高級品、帆にするにはもったいないけどね」
二人は布を担いで洞穴を出ようとしたが、マルコはちょっと気になるものが目に入った。
幅五十センチほどの重厚な木箱。
(これは夢か何かで見た気がするけど???)
持ち上げようとしたが、かなりの重量だった。鍵がしっかりと掛けられたその箱を、マルコは持ってきた斧で、叩き割った。
★グァチャーン!!
蓋が割れ、その隙間から顔を出したのは、黄金に輝く金貨だった。マルコが椰子の木にもたれて眠った時、夢の中で見た光景と同じように、中から現れた金貨に大喜びした。
マルコとクンタはその日のうちに、斧で切り出した真直ぐの樹を小舟に立てて、織物の帆を取りつけた。何本かの空のワインボトルに洞穴の水を汲み、飲み水代わりの椰子の実も十分積み込んだ。魚の干物も持っていたが、船には干し肉やオレンジ、小麦にラード(豚油)、ワインまで積まれていた。
この小舟なら、二人で十分操船できるだろう。マルコは海図が無くとも、おおよそどの方角に故郷があるか、想像はついていた。
「クンタ、僕は国に帰るけど、君はついてくるかい?」
「ワタシ、奴隷イヤ」
「君は命の恩人だ。僕の国に帰っても、売ったりしないよ」
「ワタシ、あなたに仕える。ワタシ、雇ってください」
「君は僕の命を救ってくれた人だ。雇うなんて・・・」
「いいえ、あなたも、あの船の上、ワタシ助ける、してくれた」
「じゃあ、僕は君を友達として、国に連れて行くよ」




