恋愛舞踏
一応の決着を見た今回の謁見の間での事も終わり、レノはティアに連れられて庭へと出てきていた。
「レノ――いえ、貴方が“アッシェ”だったのね」
「そうか、眼鏡を外したら、あれだけ何度も見てれば気がつくか」
「今でも未だ信じられない、けど色々と腑に落ちたわ。何故義賊であり続け、何度も不正を暴き、そして――私を何度も救ってくれた事、でも――」
「でも?」
「貴方がアッシェならば捕まえると宣言したのは王女ではない騎士としての誓いよ」
「構えなさい!」
そう告げて剣を投げてよこすティア。
やはりティアは真っ直ぐだなとレノは思う。
こんな方法で己を傷つけようとするのだから。
だが、レノは構えない。
「何故、構えなさいよ“義賊アッシェ”そして、目的を果たすのよ」
剣を抜けと迫るティア、だがレノは構えるどころか両手を差し出す。
「私に、いや僕にティアへ向ける刃は無いさ……さあ、捕まえてくれ」
「どうしてよ、貴方がアッシェであったのは真実を暴く為でしょう? それぐらい判るわ」
「いや、ティア、君は僕の一番大切な人だ、だから真実を知る前からのその思いを捨て去るなんて事は出来ないし、君に罪なんてないんだよ」
「でも、貴方の家族は……」
そう、ティアは自分の叔父を含め国王を含めた王族全てがレノから両親を奪ったと知ってしまった事で罪の意識に苛まれた結果、その仇を討たせることこそがレノへ出来る唯一の事だと思いつめたのだ。
だが、レノはそんな事を気にしない、寧ろそのセリフには反発した。
「僕には家族はいるさ、素敵な父と母と妹がね」
今までの孤児院での様子を思い出し、恥じ入るティアは素直に頭を下げる。
「あっ、そうよね、ゴメンなさい」
だが彼女の天然具合はやはり凄まじいなとレノは呆れただけだった。
――もしかして、気がついてないのか?
一瞬過ぎった思考は直感とも言えるものだった。それに従ってレノがティアに問いかける。
「と言うか、一応重要な事を喋った心算なんだけど、反応が薄いよね? いざとなれば君を盗み出して、ネレルを殲滅して逃亡も考えてたんだけど、気がついてない?」
「え?」
「『君になら捕まってもいい』と告げて、それに『君が一番大切』だとまで言って『君を盗み出す』……ここまで言ってこれだ……本当に平常運転だなあティアって」
思いの丈を露にしたことを告げるレノ。
まさか本当に気がついてないなんてと、少々可笑しくなったが、それこそ何時ものティアだと安心もする。
問題はその事をやっと気がついたティアだった。
「え、え、それぐら……――ッゥ!」
最初は何を当然なと言葉を返そうとしたのだが、その意味に気がついた後は顔を赤らめて、何時もの状態に陥った。
「漸くその反応か、良かったよ、実はなんとも思われてなくて独り相撲だったらとか心臓に悪くて焦ったよ」
「レ、レレレ」
「うん僕が」
「ッッッッ」
「そう、ティアを」
「ァ――――」
「愛してるって事だよ」
『レ』『ッ』の連続とか身振り手振りで全て遣り取りができる仲なのだからいい加減ティアも判るべきだった。
そして、ティアは己の思いを伝える方法を一つだけ思いついた。
そうだ、捕まえてしまえばいいんだと。
「あ、ああ、私は――つ、捕まえた!」
突然のキス。
そう、捕まえただけでは終わらない。こんなにも思い続けたのだから。
「へ?」
レノが突然の出来事に驚く。
そしてティアは宣言した。
「捕まえたもの、貴方はもう私の物よ絶対に逃がさないわ!」
「でも僕も君の笑顔と心は盗ませてもらえたようだ」
溢れるばかりの幸せを笑顔に変えて、二人は抱きしめ合うと互いに口を近づけて想いを交わした。
草むらで悔しがる少女と『ヨシッ!』と手をグッと握り締めた侍女と少女がいたのはちょっとしたおまけであった。
お読み頂き有難う御座いました。
色々考えてまた書き直すかもしれませんが一旦ここで二人の物語は完結させます。
少し語らなかった部分など裏の設定もありますが一応設定を置いておきます。




